「よく来てくれました。
 カメラが入っていて見にくいかもしれないけど、楽しんで行って下さい」

ヴィデオ・シューティングでパフォーマンスされた日本武道館【TOUR ONE LIFE,ONE DEATH】最終公演。
この模様は翌年2001年3月28日ライヴアルバム『ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP』として発売されるが、
本命は何と言ってもこの日のセット・リストを完全にパッケージした
同タイトルのヴィデオとDVDの同時発売であったろう。

この作品には、BUCK-TICKメンバーの断片的なインタヴューが挿入されていて、
さらにファン酔溺の内容となっている。
「die vernehmung」と題されるこのインタヴューは、メンバーのポリシーが顔を覗き貴重である。

「サファイア」まで一気に通してつづく『ONE LIFE,ONE DEATH CUT UP』も
ここで一区切りおき6曲目としてドイツ語で「6 Erscheinung」と題されたトークを披露し、
「DOWN」へと進んでいる。

このコメントのクエスチョンは視聴者の想像にお任せが趣向となるが、
この訳はドイツ語で直訳すると、出現、現象、外観などで、
これは、自分達を取り巻く「環境」ではないかと推察される。

櫻井「みんなの言う社会、現実の世界のことですね。
大きいですから、自然に取り込まれてるというのもあるし…
ううん、自意識過剰ではみだしたいみたいなのもあるんですけど、怖いですね、考えると。
あんまり考えたことないですけど、一瞬だな…と思う」

樋口「んんん…」(首をかしげる)

ヤガミ「ま、とりあえず、ま、合わしてるっていうか…」

星野「はい」

今井「思いません」


この断片的なインタヴューは、いろいろ質問された回答を
林ワタル監督がばらばらに編集してつなぎあわせたものとされる。
視聴者も、何に対しての回答かを想像して楽しめる創りとなっている。



その後も

「9 Flu ssigkeit」液体
「12 Bist du ein mensch」あなたは人間ですか
「15 Monsters」怪物(達)
「19 Zusammen Kommen」絶頂
「23 Und mehr」つづく
「26 Ein leben,Ein tod」これはタイトル『ONE LIFE,ONE DEATH』一度生まれ、一度死ぬ

と続き非常に興味深い。



「Oh, my baby....」
櫻井敦司の合図からヤガミ“アニイ”トールのカウントが始まる。
「DOWN」だ。

やや早めテンポで、地獄の底から湧きあがりながら、やがて堕ちて行く「DOWN」。
マーキュリー時代のグランジ・ロックであるが、
すでにアルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』のプロト・タイプとして作られたような気配すら感じる。
こういったマーキュリーの名作も彼等のライヴではよく取り扱われるが、
この一連の 【PHANTOM TOUR】【OTHER PHANTOM TOUR】
そして【TOUR ONE LIFE,ONE DEATH】では、まさに本編の中央に存在感を持って披露されている。

暗がりのステージの中で顔面にスポットを浴びる櫻井敦司。
ステージ全体がフラッシュし、今井&星野の黒光りする美しいレスポール。
暗黒世界を引き裂くが如く樋口&ヤガミ重い躍動。
すべては、BUCK-TICK的美学に彩られている。

櫻井敦司は、業火に焼かれた魂を鎮めるかのように水を被る。


 

DOWN
(作詞:櫻井敦司/作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


hi baby. おかえりなさい
いつか未来は光り輝くだろう
世界中闇となった地獄の季節
私は鳥になって飛んでゆく
飛んでゆく世界中闇になってお前も見えない
俺は鳥になって飛んでゆく 飛んでゆく

乱れだした俺の顔で おまえは笑うだろう
見つめ合ったお前とのweekend. 目覚めたなら俺もお前も夢さ