「Shine. 聖なるくちづけを Rain. 死ぬほどただ待ちわびる」
「一度生まれて 一度死ぬ」の英約がそのままタイトルとなった『ONE LIFE,ONE DEATH』。
全編“外”への強いエネルギーが漲るグルーヴィーな仕上がりになったが、
「CHECK UP」で乗っけから、“生命”へのBT流生き様を唄ったが、
次の「サファイア」では、はやくも“死”への誘惑、もしくは“死に様”を披露することになる。
今井寿のゴシック・テイストの幽玄なメロディの中で、
伸びやかな櫻井敦司のディープな血が混じり合い、
まさに“宝石”の如く、鈍く光る「サファイア」。
後にゴシック大作『十三階は月光』へのコメントで、今井寿は、
「やっぱり、あっちゃんなんだよ。BUCK-TICKは…」
と発言していたが、すでにこの2000年時点で、
この分野において独自のゴシック・カルチャーを完成しつつあった
ヴィジュアル・ロック・シーンにおいても、
BUCK-TICKは、その存在感を如何なく発揮する存在感を有していた。
海外に目を移すと櫻井敦司が敬愛したバウハウスは、
ゴシックの元祖とも言えるバンドである。
内容はかなり暗いが、音楽はパンク並に激しい。
ポスト・パンクのバンドで最も人気があった。
デヴィッド・ボウイの"ジギー・スターダスト"やT・レックスの"テレグラム・サム"をカバーし、
1980年にはグラムロックの新たなる継承者として賞賛を受ける。
1990年代に入って、1980年代の第1世代のなかで影響力のあるゴシック・バンドは
Switchblade Symphony や London After Midnightといった北アメリカのバンドが
素材をリリースしだした。
イギリスからはChildren on Stun、 All Living Fear、Vendemmianや Rosetta Stone
といった新人バンドが現れ、
The Crüxshadows、 The Last Dance、 Sunshine Blind や
The Shroudも1990年代に活動を開始した。
1990年代半ばから後半にかけて、大手レコード会社では、
ゴシック・バンドやインダストリアル・バンドとして、
HIMやマリリン・マンソン、エヴァネッセンスやウィズイン・テンプテーションといった
実際はゴシック・ロックのミュージシャンとして活動していない、
ハード・ロックやメタル・ロックの人気バンドを扱いだした。
ゴスという単語はこういったメジャーなバンドや
Hot Topicや、"mallgoth"の美学、
そしてアメリカのマスコミがゴス文化に対して中傷したり白い目で見る結果を生み出した
コロンバイン高校銃乱射事件に関係するものであるということを、大衆の心に植え付けた。
内面的に、このころのゴス・サブカルチャーというのは、
次第にダンス・クラブ的なものだけになっていった。
ゴシック・ロックは変わったのである―――現代的なダンス・クラブ・ゴスは、
同じテクニックや美学を使いまわし、インダストリアルのビートにのった足取りになったのだが、
踊れるインダストリアル・ミュージックは硬いサウンドになっていく一方、
スタイルをゆがめたりメタルやテクノからの影響の少ないゴス・ミュージックは
アンヴィエントな柔らかな音になっていった傾向がある。
オールド・スクールや第1世代のゴス・ロック・ミュージシャンや
中世を模したミュージシャンもいる一方、
多くの現代的なゴシック・ロックというのは、
しばしばニューウェイヴやシンセポップに対して革命的な響きを持っている。
この2000年に入ってから、
一部のゴス・ロックファンが1980年代の第1盛大のファッションや音楽にかえる
デス・ロック・リヴァイヴァル・ムーヴメントに参加するようになる。
今井寿の頭の中にはこういったゴシック・リヴァイヴァルの経緯を、
櫻井敦司というファクターを通して出力するBUCK-TICKこそ、
唯一無二に、輝く宝石であると定義したのだろう。
BUCK-TICKが好んで聴いていた標榜となる
ザ・キュアーやバウハウスのハイクオリティなサウンドは
ガチャガチャしたギターとクラブ・サウンドにあまり関わらないアレンジとして性格づけられていた。
その初期のゴシックサウンドに加え、ハードテクノでの経験を踏まえた独自のゴシックロックこそが、
BT流ゴス・サイバー・サウンドと言える。
「サファイア」にはそういった輝きがある。
もしくはノスタルジーに浸る不死身のドラキュラ(櫻井敦司)が
死ぬことが出来ない自分に憂いを感じ、幽玄に湖を舞うかのようであった。
サファイア
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
愛と死の匂いは ロマンティッ クなる風
(romantic more roma...)
狂気。ムチあるいは ルナティックなる夢
(lunatic more luna...)
Shine. 聖なる夜濡らす Rain. 雫を浴び気が触れた
