「抱いて慰めてくれ そう甘く
だめだ溺れてしまう 優しい君の中」


スタビライザーからフライングVへ持ち替えた今井寿。
櫻井敦司の「前と後ろから攻めてくれ。混ざりあおう」というMCとともに
20世紀ファイナルの2曲目は、「唄」。

ステージは赤い照明に染まる。

【TOUR ONE LIFE,ONE DEATH】大阪公演、名古屋公演とは、セットリストに変更がある。
セットトップの「GLAMOROUS」は共通であるが、大阪・名古屋公演では、
アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』の流れを組み、
BT流サバイバル・レクチャー「CHECK UP」愛と血の宝石「サファイア」と続いたが、
日本武道館では、いきなり「唄」。

大阪・名古屋でファンを感動させた
この「唄」から始まるBUCK-TICK中期名曲集
「鼓動」「DOWN」「ASYLUM GARDEN」「キラメキの中で・・・」「ミウ」。

この日、日本武道館では、「唄」の後には『ONE LIFE,ONE DEATH』ナンバーに戻り、
再度、「DOWN」「ASYLUM GARDEN」「キラメキの中で・・・」「ミウ」とパフォーマンスされている。
残念ながら、感動的な「鼓動」が外れてしまったが、
本編終盤に「BRAN-NEW LOVER」が選曲された。
(※「BRAN-NEW LOVER」は名古屋公演のアンコールでもプレイされている)

こういったシャッフル・プレイも、後の【THE DAY IN QUESTION】の
パーティー的な雰囲気を盛り上げる為に参考になったのではないか?

何が飛び出すかわからない。

日本武道館では、予想外に2曲目に「唄」が来たせいで
「おおっーーー」という歓声が上がり、今宵のセットリストがどのように展開されるのか、
まったくわからなくなり興奮度が増すということになる。
実際にセット・リストを変更したのは小差であるが、ここが演出のキモとなった。



「GLAMOROUS」に変り、「唄」では、今井寿、星野英彦は定ポジでヴォーカルと演奏しているが、
反対に今度は、櫻井敦司が、左右のサイド・スタンドへ颯爽と出向き、観客を煽る。

アリーナを見下ろす櫻井敦司、樋口“U-TA”豊の指弾きのベースがうなれば、
黄色いライトが今井寿を包みこむ。

「誰も泣きたいはずだろ 優しくきっとされたいはずさ」

肉体の「叫び」が聞える、この「唄」。
“生命”への絶望と“死”への拒絶が前から後から攻め込んで混ざり合う。
本当の“死”を知らなければ、また“生命”を知り得ず、
また、本当に“生き抜いた者”に与えられる“真実の死”を、
考えることではなく、感じることで習得せざる得ない因果な動物人間。

そんな深い森の中で、見つけたお前を、こんなにも俺は愛していたのに…。

そんな「叫び」が、肉体を通じて溢れ出す。

“命”は、限りなく燃える。


BUCK-TICKというバンドが、生きることの意味を、再び問う。

もう『Six/Nine』時代の苦悩だけではない。
彼等は成長し、一度っきり“生命”をいかに生きるべきか!

そう問う。

『ONE LIFE,ONE DEATH』のキーワードは、それに他ならない。






 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



どうして生きているのか この俺は
そうだ狂いだしたい 生きてる証が欲しい

神経は落ちてくばかりで 鼓動はずっとあばれ出しそうだ

深い森に迷い お前の名を呼ぶ

逃げ出すことも出来ない 立ち止まることも知らない
聞いてくれこの声 お前を愛しているのに