「一度生まれて 一度死ぬ たった一度 一度死ぬ」
アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』のライヴ・ツアーは、当初から3部に分かれて構成されていて、
ホールクラスを巡回する【PHANTOM TOUR】、
オール・スタンディングでのライヴギグ【OTHER PHANTOM TOUR】、
その集大成として3大都市で開催される【TOUR ONE LIFE,ONE DEATH】。
映像はライヴハウスで展開された【OTHER PHANTOM TOUR】の11月3日ファイナル赤坂BLIT公演を、
11月25日、TBS系BS-i『BLITZ INDEX』でダイジェスト放映。
更に12月16日、地上波TBS放送で『BLITZDAMACY』として、その模様が放映された。
ライヴ・ハウス規模でのパフォーマンスで、当時のBUCK-TICKがツアーを行うのは、
前年PIGとともにZeppを巡回した【Energy Void TOUR】を彷彿させるが、
新アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』を引っ提げての今公演では、
更に、熱狂度が増しているようだ。
導入部で、櫻井敦司によるインタヴューも収録された。
「乱暴ないい方かもしれないけど、…どうなるかわからない」
ということであるが、
ライヴ=生モノという“臨場感”こそが、彼等のガソリンとなっているのは確かのようだ。
特に、観衆との距離が密接なライヴ・ハウスでのサーキットでは、
オーディエンスも、席指定がないため、トラブル等のリスクと裏腹に、
ライヴ・ハウスでしか得られないエネルギーがほとばしる。
これは、まさに、バンドとオーディエンスの壮絶なバトルに他ならない。
【OTHER PHANTOM TOUR】のオープニングに抜擢されたのは
『ONE LIFE,ONE DEATH』のアルバム・タイトルの由来とされる「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」。
否、【PHANTOM】としてはツアー全体の表題楽曲と言えるかのかもしれない。
この楽曲のタイトル「ドリー」とはクローン羊のことであり、
クローンのように似通ったものが乱発される昨今の音楽シーン(もしくはファッションシーン)を
皮肉っているは有名な話だが、作詞作曲を今井寿が担当し、更に大胆に導入された今井自身のヴォーカルパート。
櫻井敦司との掛け合いは、すでに名人芸になりつつあるようだ。
今井寿の脳内を駆け巡る“ソラミミ” の“ボサノバ”は、
自身の存在すらファントム(亡霊・幽霊)に感じてしまうほどに、
現実と妄想の中で揺れ動く。
人生なんて、大体、本物か?夢うつつか?証明できるものなんてありはしない。
そんな幻想の中でも
「始まりがあり 終わりがある オレタチは直線上の存在」
であり、オレもキミも同じ細胞分裂の成れの果てかも知れないのだ。
これは、人生がいかにファンタジックなんだろうという幻想である。
ひょっとするとオレは、キミだったのかも知れないし、
もとを正せば、オレもキミもだたの同質の細胞に過ぎないのだ。
そういった細胞分子レベル原子レベルで人間(物質的存在)を見れば、
“魂”とか“観念”とかいう“心”って一体なんなのだろう?という疑問に到達する。
だからこそ“ONE LIFE,ONE DEATH”、人生を生き抜くのだ。
「一度 生まれて 一度死ぬ 命短し 恋せよ乙女」
今、目の前にある“生命”を生き抜くってことだ。
という今井寿の声が聞こえてくるようだ。
この歌詞のように、バンドとオーディエンスの決着の着かないバトルの末に、
【赤坂BLITZ】の空間で双方は、見事に一体化し、ドロドロに溶けあい、
初っ端から“魂”や“観念”のるつぼと化していく。
※トータルとしての今井作品らしく芸が細かく、歌詞の
「ソラミミが聴こえる ボサノバ始まる」
では、実際に櫻井敦司がソラミミの音階で歌い、今井寿がボサノバ風のフレーズを奏でている。
※また同楽曲は映画「ブレードランナー」の元となった
フィリップ・K・ディックのSF小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』がモチーフの一つとなっている。
そういった意味では、「疾風のブレードランナー」に続いているのかも知れない。
細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM
(作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
救われたいなんて思わない 報われたいなんて思わない
存在 自体 オレはシンプリ そうさ大体 オレがオリジナル
始まリガアリ 終わりがある オレタチは直線上の存在
一度 生まれて 一度死ぬ 命短し 恋せよ乙女
眠れない夜 ドリーは殖える ホラ後に同じ顔
細胞具は ドリーの夢をみるか 柵を飛び越えLoop the Sheep
