2000年9月の「GLAMOROUS」リリースと供に,
解き放たれたBUCK-TICKの“外”へ向かうエネルギーは、
まるで、新人バンドが、メジャー・デビューしたかのような熱狂と、
ベテラン・バンドが醸す余裕を同時に、そして直接的にファンに向けたメッセージと化し、
往年の休眠ファン層を今一度フィールドに引き戻しただけに止まらず、
BUCK-TICKに、インスパイアされて登場したバンドのファン達を巻き込んで、
全く新規のファンを生み出すことになった。
2000年、当時、やや画一化されていた日本ロック・シーンには、
元祖ヴィジュアルの大物の復活として、諸手を挙げて迎えられたと言ってよかった。
それまで、メディアへの露出が限られていたアーティストの
興味本位での、注目という面は確かにあったかもしれない。
しかし、このBUCK-TICKの新譜「GLAMOROUS」は、それに十分応えられるだけのポップなメロディと、
このバンド特有のキラメキを内包していのだ。
「日本に、まだ、こんな魅力的なバンドがいたのか?」
再確認させるには充分なクオリティーの一曲であり、
BUCK-TICKという日本ロックのアイコンをメインストリームに押し上げるに充分な
キャラクターをメディアに露出度を上げるという古典的な方法論で実現していた。
伝説と化したBOOWY後継者として、名を馳せたバンドが、
そのサウンドと世界観から、後続のヴィジュアル・バンドに多くの影響を与え、
その後続バンドが、すでにビッグ・バンドとして凄しいセールスを記録していたし、
世を席巻したTKサウンドに疲れたリスナー達も、
マスメディアに露出度の高くなった、こういったバンド達のパフォーマンスから先祖帰りし、
これが、J-ROCKの元祖の姿か!と、マーケットにも歓迎されたのである。
もう一つには、シングル「GLAMOROUS」のリリースが1年ぶり、
スタジオ・オリジナル・アルバムが3年ぶりというブランクが存在していたことだ。
その間に登場した1999年リリースのマーキュリー時代後半を彩る
「BRAN-NEW LOVER」「ミウ」のシンプルでキャッチーな歩み寄りが
BUCK-TICKに商品価値の蓄えが充分にあったことを示唆していた。
1990年以来、「惡の華」において先駆的に展開された
X JAPAN、ZIGGY等ヴィジュアル系ジャパン・ロック・シーンも、
キラ星の如く登場したアイドル達
LUNA SEA 、L'Arc~en~Ciel、GLAY 、黒夢に率いられて確たる地位を築き、
続く、メディアのフォロアーの手によって、
ジャパン・ポップ・ワールドを小さなBUCK-TICKたちでいっぱいにしつつあった時代だ。
アンチ・スターダムに則ったモノクロームなパンク/HMとは裏腹に、
その豪華なナルシシズムが、ストリートとクラブ・カルチャーに融合して脚光を浴びせていた。
両性具有の異星人で、リスキーなドラッグのスキャンダルも持ち合わせ、
はたまた、レイヴとロック融合のテクノ・ポップのパイオニアであった
BUCK-TICKはまさしく彼らのヒーローであり、
2000年という年は諸手をあげて彼等を歓迎したのである。
そして、時代は彼等の創りだす“次の何か”を待ちわびていたのだ。
この期待とBUCK-TICKの創作意欲とは、この時、ぴったりとリンクしていた。
むしろ、彼等はゴシック/暗黒三部作、
そして、ハードテクノと自我を貫いた意欲作『SEXY STREAM LINER』によって、
ある程度の自己燃焼感を、すでに感じていたのかも知れない。
そこに、リスナー(この時は、後輩の多くのミュージシャンもこれに当たる)との間に
ギャップが生まれたのは確かだろう。
しかし、マーケットは、BUCK-TICKを放ってはおかなかった。
映像は、日本テレビ系『m.m.m!』に2000年9月5日に出演したもの。
櫻井敦司が、「お気に入りワインベスト3」と発表するも、
恐らく、自分のイメージに合わせたいが為のいかにも企画モノといったところで、
最期は
「メンバー全員酒飲みなので…、実は、焼酎のほうがもっと好きです」
と気取らずオチを付けるところが実に彼らしい。

『UV59_cover』
GLAMOROUS
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
