「GLAMOROUS」のMaking of PVは、BMGファンハウス移籍の初めてのファン・サービスとなった。
ビクター・エンターテイメント時代には、こういったメイキング作品が、
キャピタゴンとして、度々ファン向けにリリースされていたが、
マーキュリーは、販売促進方法やマーケティング戦略が独自で、
MAXIシングルを中心とした展開と、ライヴ・アルバムという進行でスタイリッシュだったが、
ファン向けという意味では、物足りないものであったかも知れない。

このメイキング映像は、シングル「GLAMOROUS」と新作アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』にある
応募券で300名に当選するというイベントで、バンドとファンに掛け橋としては、
レコード会社として力を傾ける企業であるようだった。


1999年10月にマーキュリーの最後のMAXI『ミウ/パラダイス』を発表後に、
今井寿は新作へ意欲をこう語っていた。

―――ところで、恐らくは来年になるんでしょうけども次はアルバム制作ですよね。
今回の欧米のアーティストとの競演で得たものとかが反映されるんですかね?

今井寿
「今はまだ何も考えていないし、どうなるかは分らないですよね。
ただ影響は明らかに受けてると思うし、自分なりに感じたことも多いんで、
それはこれからアルバム作りをしていく内に出てくると思うんですよ。

いつもそうなんだけど、何か面白いと思う音楽と出会っても、
それを自分の表現として出せるようになるには時間がかかるというか、
一度身体の中で自分なりに納得して消化してからでないと出せないですからね。

やっぱり常にBUCK-TICKだったらどうなるかっていう部分が見えてこなと出来ないことですからね。
まあ今はまた、いろいろ面白いものを探してる段階なんですよ」

―――ただこれまでもBUCK-TICKは、時代ごとにアルバムのサウンド・カラーが明確にあって、
着実に大きな流れの中で少しずつ音楽性も変わってきたと思うんですよ。
その意味で次のアルバムは大きな節目になりそうな、漠然とした期待感があるんですが。

「まだどうなるか分らないけど、これまで意識してやってきたのは、
前のアルバムとはイメージ的に重ならないようにしたいということなんですよ。
どこがどう前のアルバムと同じなのかって言われるとよく分んないですけど、
でもそれは自分で感覚的に分ってるんですよね。

例えば今回のようにある意味肩慣らし的なシングルとして、
トータル感とか関係無しに一曲作ってみると、ああこれは前の感じに近いなっていうのは分かるんですよ。

ただそういう曲ばっかりだと、レコーディングだけならまだしも、
それをツアーとかやってると凄く苦痛になってくるから、自然に新しいものを求めちゃうんですよね。
それはデビュー当時、短期間で何枚も作った中で学んだことなんですけど」

―――でも、それってある意味で自分を追い込む作業だから、けっこうハードでしょ?

「いや、ツアーで苦痛を味わうよりは全然ラクですよ。
というか、アルバムを作ると決めたら、どんな物にしようか考えてるだけで気分も高揚してくるから、
逆にそれが快感になると言うか楽しいんですけどね(笑)」

(以上『FOOL'S MATE』誌より)




ヴィデオ・クリップに登場するメンバーも、30歳代中盤に入り、
以前の中性的なイメージではなく、
男盛りの大人のセクシーを漂わせる雰囲気へと変貌しいる。
衣装的には、前年のライヴ【赤坂BLITZ】やPIGとのサーキット【Energy Void TOUR】
で着用していたものに近い割とカジュアルなファッションで出演していて、
ヴィジュアルに傾倒した以前よりもサウンドに重点が置かれた覚悟の表れと思われる。
舞台もレコーディング・スタジオに久々に登場したメンバーという設定で、
“音”へ執着心が感じられる内容だ。

サングラスを着用する櫻井敦司は、以前の儚げな麗しさよりも力強い表情で、
ヴォーカリストとして君臨しているし、
今井寿にしては、シンプル(奇抜ではない!)なタンクトップと白いパーカー、
そして、ヘッドフォン。彼にしては、どうしようもなくカジュアルだ。
つづいて、ヤガミ“アニイ”トールの、生涯貫くと誓った怒髪天を衝くヘアーは健在。
樋口“U-TA”豊も、クリップでは髪の毛が逆立っているが、この後、徐々にオールバックが主流になる。
星野英彦も、【SEXTREAM LINER】時はパンキッシュに逆立っていたヘアーを、
洗いざらしのナチュラルなスタイルにヘッドフォンをかけてカジュアルだ。

櫻井敦司が、スタジオの窓ガラスに近づいて手を付くシーンを見て、
ファン達は、BUCK-TICKがその才能を発揮する場所を探し求め、
自分達の前に再び登場してくれたことを神に感謝したことだろう。

そう、BUCK-TICKは、その長いキャリアの中で、
一時的に、“雲隠れ”現象を起こし、再び登場するというパターンを
何度かしている。

そうして、再登場するときには、いつも、なにか新しい感情を、
我々に呼び起こすマジックを持って現れる。
その度にファン達は、それがパターン化しているにも関わらず、
「ああ、また、BUCK-TICKに会えてよかった」と心からそう思うのだ。


なぜなら、彼等の存在は、いつか神隠しにあってしまそうな、
刹那的なスリリングな“稀有さ”を有しているからに他ならない。

「GLAMOROUS」の歌詞もまさにそういった“稀有”さ纏っていた。



GLAMOROUS
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)