2000年9月6日にリリースされた移籍第一弾シングル「GLAMOROUS」は、
先鋭的なセンスを持つ傍ら、普遍的なメロディを生む才能に長けた今井寿が、
“最近しまっていた伝家の宝刀”をズバッと抜いたような、
―――まるで水面に乱反射する光のおぼろげなキラメキを、
そのまま音に封じ込めたような、まばゆい美しさを湛えた楽曲であった。

個人的で申し訳ないが、僕は、当ブログのタイトルを考えた時の候補に、
【ROMANCE】と【GLAMOROUS】の双方で悩んだ。
それほど、この楽曲は、このBUCK-TICKというバンドの象徴的な楽曲であったのだ。
(少なくても、僕に取っては…)

マーキュリー時代の、いや、もっと前、
暗黒世界に足を踏み入れた『darker than darkness -style 93-』や
魂の叫びと、その渾身の内面を抉り出した『Six/Nine』の頃からか、
インナーな世界へと深く深く潜り込んだBUCK-TICKのパワーは、
アーティスティックを追求し、その内向性を高めていった。

世間の評判からの“反骨精神”からか『COSMOS』でロックへの回帰を試みたが、
これも、好奇心からの実験的な挑戦の一環であり、
極めつけは、マニアックな世界観を更に貫いた『SEXY STREAM LINER』で、
排他的とも取れるアヴァンギャルドな一連の楽曲群は、
非常に高品質のクオリティーを誇っていたが、決して分かり易い作品とはいえなかった。

そして、外へ向かっての“音”への執着心は、
この「GLAMOROUS」で解き放たれた。

そういう意味において、この「GLAMOROUS」は、
強い外へ力が漲る『狂った太陽』と同質のパワーを感じるし、
BUCK-TICKのリアル・タイムという意味では、
セルフ・ポートレイトとしての代表曲「スピード」に近い感覚で、
この「GLAMOROUS」は、展開されているといっても過言ではないだろう。

櫻井敦司は語る。

「例えば「GLAMOROUS」とかアルバム全体(『ONE LIFE,ONE DEATH』の事)の
トーンとかっていうのは外側に向きかけていると思うし。

その、大衆化されるっていうのも……そうやって自分たちで特別視していたいっていうのもあるけども。
それだけで、自己満足でやってても後々自分で自分を見て“みっともなぇな”って思うのも嫌だし。

だからチャレンジは凄いですよ。
個人個人違うかもしれないですけど。
まあ今までと同じことをやるんであれば、それなりに出来ると思うんですけども、
そういう感じは自分の中ではなかったんで。

だからもっと新しいものを……前やってたものでいいものは残してまた一皮剥いて、みたいな。
そういう意味では焦りとか危機感も持ってやってた」

1985年結成。
惰性で転がり始めてもおかしくないような長い年月の中で、
BUCK-TICKは常に時代の空気を呼吸しながら新しい刺激を込めた音を創ってきたし、
その過程で商業主義的なものとは対極にあるようなストイックで混沌とした音作りに取り組んだ時期もあった。
それでもなお、日本武道館ライヴをやれば完売する。
根強いファンを掴んでいる分、現状維持でもある程度存続できる。

でも、音楽番組を見ていて“この人、羞恥心がないなぁ”と思うことがあるが、
BUCK-TICKは、アーティスティックな表現欲だけではなく、
そういう――客観的に自己批判できるかどうか、という意味で羞恥心も持ったバンドだ。
だから自分との馴れ合いや独りよがりに陥らない。

「GLAMOROUS」発表後、BUCK-TICKは、3年ぶりのオリジナル・アルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』をリリース。
それに伴い、ホールクラスを回る【PHANTOM TOUR】
ライヴハウスでの【OTHER PHANTOM TOUR】
そして年末12月29日の日本武道館を含む【TOUR ONE LIFE,ONE DEATH】という3本のツアーを実施。

この「GLAMOROUS」に始まる一連の動きには、
そのキャリアや実力を再確認させる存在感や凄味も感じたが、
それ以上に、ハッとさせられたのは、作品とツアーに一貫してあった、
外に向かい突き抜けていこうとする5人の強い意志と
それが生み出すポジティヴで瑞々しいエネルギーであった。


「理由はいらない。愛してる」


GLAMOROUS
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


水の中のベットに君を誘う 数え切れないクリスタル飲み込んで
君はとってもけなげに何かを探してるけど... 帰れない二人がいるだけ

ねえ ぼんやり君の目見つめていられるのなら 目覚めを知らない夢の中
ねえ 確かに聞こえた天使の囁く声が さよなら おやすみ 君の中