「hi baby. ここへおいでよ 」

CX系列『ロケットパンチ!』出演時のライヴ・パフォーマンス。
マーキュリー時代は、特に1999年に入ってライヴ公演も少なく、
マスコミへの露出度が、極度に少なかった中、
こういったトーク中心番組で、その健在ぶりばかりか、
アルバム収録のないMAXIシングルのカップリング曲を鑑賞出来るのは素晴らしいことだ。

この「DOWN」は、斬新なテクノポップ「BRAN-NEW LOVER」とは逆に、
これぞBUCK-TICK流と言えるへヴィ・グランジ・ロックで、
地の底から唸るようなギター・サウンドに身震いする。
渾身のロック・サウンドは、ダーク・ロックの名作アルバム
『darker than darkness -style 93-』や『Six/Nine』に収録されていても違和感がない位の
圧迫感と迫力で胸に迫る。

櫻井敦司の歌詞も、ダーク・ロックらしく、
しばらく封印していたとされる“闇のパワー”を解き放つように、
この世紀末の終末的な内容を示唆しているが、
ここにも櫻井一流の【ことば遊び】が隠されているという説がある。

【DOWN】の発音は通常「ダウン」で「下へ,逆境、不振・・」という意味であるが、
【O】を使っているのに、発音が、ダウンの「ダ」(アという音)であり、
逆に【DAWN】は発音は「ドウン」で「夜明け、始まり」を意味し、
【A】を使っているにもかかわらず、発音が、ドウンで「ド」(オという音)になっている。

タイトルとして、この単語は、意味的には反対の意味合いとなり、
【DOWN】は、どちらかと言えば、ネガティブな意味であるのに対して、
【DAWN】は、「始まり」という意味もある、ポジティブな意味の単語である。

櫻井敦司は、これを反対にタイトル・メイクしたのではないか?という説である。

また、同MAXIシングルに収録されるタイトル・ソング「BRAN-NEW LOVER」のジャケットは
映画『ブレードランナー』に出てくるようなサイボーグのような女性で、
これは新人類の誕生を表していて、世紀末の終わりと新世紀の始まりの意味を含めたメビウスの輪が、
モチーフとなっているが、
カップリングされた「DOWN」「ASYLUM GARDEN」も同様のコンセプトの元に制作されたのでないか?
とされる。

終わりこそ、始まりという哲学は、アルバム『Six/Nine』にも用いられたコンセプトであるが、
1999年を迎え、2000年への橋渡しのこの年の夏にリリースされたこのMAXIには、
時期的に考えてもピッタリであった。

加えて「BRAN-NEW LOVER」のスペリングも、正確には“BRAND-NEW LOVER”であり、
【D】が抜けている点も指摘されていて、公式ファンクラブ【FISH TANK】の会報にも、
今井寿により、
「あえてアレだろ、あっちゃんは、「どっちもあるんじゃないかな。“D”があってもなくても」てこと」
とコメントされているが、知能犯の櫻井敦司は恐らく意図的にこうした謎解き的な
【ことば遊び】を瑞所に散りばめたものと思われる。

なぜならば、この「DOWN」の歌詞は、
「夜明け」という【DAWN】に近いイメージで詩作されているからだ。

「私は鳥になって飛んでゆく
飛んでゆく世界中闇になってお前も見えない
俺は鳥になって飛んでゆく 飛んでゆく 」

なんてモロに「夜明け」前というイメージであるし、
今井寿によるダークではあるが、彼方に“光”を感じるようなメロディは、
終わりに向かいつつも、始まりを意味する光景が浮かびあがる。

ひょっとすると、櫻井敦司は、この楽曲に最初「DAWN」と名づけた後、
お得意の【ことば遊び】で【A】を【O】に変えて「DOWN」としたのではないかと
妄想を膨らましてしまうのである。

こういった興味を引く、「なんかオカシイな」と思わせるような手法は、
アルバム『SEXY STREAM LINER』では多用されていたし、
実際、リスナーが更に注意深く楽曲の世界観の中で入り込みキッカケとなっているのは事実だ。

1999年、世の中は「世界中闇となった地獄の季節 」となっても、
“夜明け”はすぐそこまで来ている。
そして、「いつか未来は光り輝くだろう」と歌う櫻井敦司は、
以前の“自己破壊美学”というだけでは、測りえない詞を紡ぎあげるようになったのだ。


そして、この“終わりこそ、始まりという哲学”は、次のアルバム『ONE LIFE,ONE DEATH』収録、
「細胞具ドリー:ソラミミ:PHANTOM」の

「始まりがあり 終わりがある キミは元来 直線上の存在」

にも“Loop”されていくのだ。




DOWN
(作詞:櫻井敦司/作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


hi baby. ここへおいでよ
天使みたいに俺を堕として欲しい
笑わないおまえの顔で静かに果てる
シャムの様さ 溶け合いたい

乱れだした俺の顔で おまえは笑うだろう
見つめ合ったお前とのweekend. 目覚めたなら俺もお前も夢さ

hi baby. 早くおいでよ
PIGみたいな俺を愛して欲しい
裏切る指先で全てを掴む
のけぞる空 飛ばせておくれ

崩れだした俺の顔で おまえは笑うだろう
見つめ合ったお前とのweekend. 目覚めたなら俺もお前も夢さ

hi baby. おかえりなさい
いつか未来は光り輝くだろう
世界中闇となった地獄の季節
私は鳥になって飛んでゆく
飛んでゆく世界中闇になってお前も見えない
俺は鳥になって飛んでゆく 飛んでゆく

乱れだした俺の顔で おまえは笑うだろう
見つめ合ったお前とのweekend. 目覚めたなら俺もお前も夢さ

崩れだした俺の顔で おまえは笑うだろう
見つめ合ったお前とのweekend. 目覚めたなら俺もお前も夢さ