「僕は両手を広げ 全てを許したいと願えば ・・・」

【Energy Void TOUR】Zepp Osakaでのステージで、
カオナティックな「タナトス」の“死神”が登場した後は、やはり“昇天”だ。

「die」。

この日のセット・リストの選曲をした櫻井敦司らしいストーリー展開となった。
男らしく、イキっぱなしのライヴと【Energy Void TOUR】を表現していた櫻井であるが、
さすがに、ここら辺はBUCK-TICKらしいドラマチックな演出を加えている。

いつもよりも、過激に疾走してきたライヴハウスでのショート・レースも、
この一曲で、バンドもオーディエンスも落ち着きを取り戻し、
やがて誰のもとにもやって来る“die”と向き合うのだ。

この日ライヴ・ハウスZepp OSAKAに集結したオーディエンスも、
この時を待っていたかのように両手を挙げてこの「die」を迎え入れるのだ。
恐らく、他のバンドのファンが見たら、宗教儀式かと驚愕するだろう。
ここにいる誰もが、すこやかに“死”の唄を招き入れ、
そして、“快感”に浸っているのだから…。


この時より、7年前にリリースされた
アルバム『darker than darknessーstyle93ー』のダーク・ワールドの終末には、
晴れやかな“死”と“再生”が待ち受けていたが、
この日のBUCK-TICKも短距離走を全力疾走した後のランナーズ・ハイ状態が、
この「die」とともに訪れる。

タイトルに反して、穏やかな調子でスタートする同曲は、
クライマックスが訪れるにつれ、次第に高揚し出し、
最後は、絶叫の中に“死”を受け入れるのだ。



本物のドラッグ・ソングとは、本当にこういうものだ。
脳内エンドルフィンが抽出されて、“快楽”のもとに逝くことになる。

そして、いつも、BUCK-TICKにとって“死”は、本当の最期ではない。
必ずや、その先に、何か進化した形を提示するのだ。
これは、もうBUCK-TICKの必殺パターンと言っても過言ではなかろう。



そして、今回は・・・BRAN-NEW ・・・。



新世紀を迎え入れ、
飲み込んでしまおうというのだ。

恐らく、7年前に“死”を受け入れてしまったバンドも、
そして、それに追従したスレイヴ(ファン)も、
この1999年という年の一番のスキャンダル、
何世紀も昔にノストラダムスという予言者の滅亡のストーリーすら、
恐怖に値しないと感じていた瞬間かもしれない。



die
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


僕は両手を広げ 全てを許したいと願えば
君は空から降り立つ
真実なんてものは 僕の中には何もなかった
生きる意味さえ知らない

なんにも
あー 星が海泳ぐみたい
あー 楽しげに誘う様に 夜は優しくて・・・

あの雲さえ越えてゆく キラメクまでこの夜に
何処まで まだ飛べるだろう 疲れ果てたこの体
死ぬまではばたいていく

ここでお別れしようよ 悲しい事は何もないはず・・・
軽く最後のKissして
楽しい夢は終わる まぶたを閉じて 永遠を感じて
肌に死というぬくもり

夢じゃない
あー 目覚めには 遠く深い
あー ここは何処 僕だれなの? 僕は突き抜ける

体はもう ちぎれそう この声も この愛も
遠く消える 青い星 みつめては うつむいて
サヨナラ 全てのものよ・・・

もう二度とは帰れない 生まれてきた あの海へ
遠く消える 青い星 みつめては うつむいた
サヨナラ・・・