櫻井敦司と一緒に後ろ向きに並んだ今井寿の
背筋に効くギター・イントロがZappの空間を覆い尽くす。
マーキュリー時代の狼煙を上げたハイパー・ポップ・チューン。
本格的にデジタル・ロックに取り組んだ第一歩の楽曲だ。
この一曲からBUCK-TICKは、新たなる境地に覚醒したと言っても過言ではない。



星野英彦はこの夏のイベント・ライヴとデジタルな方向性について語っている。

星野英彦
「まあ今回は、いつものようなアルバムを出してのツアーと違うわけだし、
今年は最初からイベントをやろうって話をしてたんですよ。
その中でどうせやるんだったら自分達と合うようなというか、
好きなバンドとやりたいねっていう話をしていたらこうなったというか。
その意味でマンソンやPIGと一緒にやれてよかったし、
自分達もいつもと違う環境の中で良い刺激を受けつつ、楽しんだという感じですね」

―――あの日はBUCK-TICKファン以外は、ほとんど洋楽系ロック・ファンだったわけですが、
客観的に見ても自然にあの場に溶け込んで盛り上がったというかBUCK-TICKの貫禄勝ちだったと思うんですよ。
実際ステージでの手応えはどうでしたか?

「そう言ってもらえると嬉しいですね。
実際、思っていた以上の反応というか、ステージからお客さんのノリがよく見えましたからね。
そういう手応えは充分にありました」

―――もう一つ、
BUCK-TICKの最近の音楽的な傾向でもある打ち込み等のエレクトロニクス・サウンドを採り入れた今回のアレンジが、
マンソンやPIGとの競演でも違和感無くハマったというのも大きかったと思うんですが。

「それはあるかもしれないですね。

基本的にはそれほどアレンジを変えたという意識はないんですが、
ここ最近デジタル的な音の要素は着実に増えて来ていますからね。
その意味でこの夏のライヴで一つのカラーというか統一感のようなものを感じてもらえたら嬉しいですけどね。

それと洋楽しか聴いてこなかった人達が、
少しでも自分達に興味を持ってくれればいいかなと思いましたね」


―――これまでのイベントやパッケージ・ツアーのようなことをあまりやらなかったBUCK-TICKとしては、
今年のツアーは自分達の音楽的なポジションというか、
方向性のようなものを初めて外に向かってアピールした意義のあるものだったと思うんですが。

「もし結果的にそう感じてもらえたとしたら、それはそれで嬉しいことですよね。
今の気持ちとしては、今後も海外のアーティストとの交流を深めて行きたいと思ってるし、
俺らも向こうに行ってライヴやったり、どんどんそういう方向に進めたらいいなと思ってます」

―――ある意味でこの夏のライヴはBUCK-TICKにとってキャリアの大きな節目というか、
何かのきっかけになるようなそんな気もするんですけどね。

「それは充分に感じています。
決して日本でやるイベントがどうしたとか、良い悪いって言うんじゃないけど、
俺らは違う所に行きたいなっていうのもあるし、
10年やって来てやっぱり自然の流れなのかなと思うところはありますね」

―――そう言えばライヴ毎に選曲も違ってましたけど、どういう基準で決めたんですか?

「先に適当に20曲ぐらい選んであって、リハーサル時にずっとやってたんですよ。
それで直前になってマンソンの時はこれ、ブリッツはこれと、何曲か入れ換えたりしたんですけど。
基本的にはアッちゃん(櫻井)が決めたんですですけどね。
まあ今回は代表曲に近い選曲だったと思いますけど」

(『FOOL'S MATE』誌より)


この「ヒロイン」も洋楽ファンの目をBUCK-TICKに向けさせるには、非常に面白い素材だろう。

今井寿も語っていたが、もうヴィジュアルだけのチャラチャラしたバンドではないサウンドだ。
かといって、完全に洋楽ロックに血を売り渡したわけではない。
ジャパン・ロック特有のキャッチーな部分も含んだ「ヒロイン」はまさに万能な一曲。

そう“エキゾチック!”といってBUCK-TICKを評価する熱心なリスナーは欧米にも多い。
この頃の活動がそれに火をつけたのかも知れない。


そんな「ヒロイン」がZepp Osakaを熱狂させた。


ヒロイン
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



天国を探そう 天使達の星を
純白のヒロイン 限りない旅に出よう

おまえとひとつだ
何処までも飛べる 白い影を引いて
純白のヒロイン 終わらない旅に出よう

目を閉じて・・・・・

あなたの瞼に光る銀のしぶき
サソリと十字を抱いて夜の果てへ

蓮華の花びら 君が咲いた彼岸
サヨウナラ夢よ ふたりなら飛べるはずさ

目を閉じて・・・・・

カルマの雲裂き走る銀のしぶき
流れるアクエリアス抱いて夜の果てへ

目を閉じて・・・・・

あなたの瞼に光る銀のしぶき
サソリと十字を抱いて夜の果てへ

カルマの雲裂き走る銀のしぶき
流れるアクエリアス抱いて夜の果てへ