『SEXY STREAM LINER』からシングル・カットされた「囁き」も、
ラウドなギターが全面に押し出され、サウンドの壁PIGから引き継ぐ
【Energy Void】のスリリングな展開のまま、パフォーマンスされた。

官能的な内容を持つ同曲のプレイを、
インダストリアル・ハードなタッチで演奏する今井&星野コンビが引っ張る。

この前の8月19日に実施された【ノータイトル】赤坂BLITZにて単独ライヴにおいては、
饒舌にMCを決めていたかと思うと、次の瞬間、アンニュイな態度に変わる櫻井敦司は、
「囁き」の艶めかしいヴォーカル・スタイルにぴったりであったが、
この【Energy Void TOUR】では、ライヴ規模も観衆と非常に近い位置でストレートな表現で、
ロック・ライヴ的なアプローチのBUCK-TICKと言える。

こういったライヴ・ハウスのタイトな感覚で、
アヴァンギャルドな『SEXY STREAM LINER』からのナンバーを料理するBUCK-TICKには、
同アルバムのインナーな広がりを外に向けてのパワーに変換する作業が必要だった。
そういった作業の中で、バンドは今後の展開を模索していた感もある。

そういった意味で、このマーキュリー時代後半のこの活動において、
後に次のレコード会社に移籍したBMGジャパンでの展開が、おぼろげながら垣間見れるのだ。

外へ広がるパワーは、オーディエンスにもダイレクトに伝わり、
『狂った太陽』期のライヴ・パフォーマンスにも繋がるのかもしれないが、
それまで、「わかる人だけ、わかればいい」という誤解を招いていたステージングも、
そのアート志向も、ストレートなロックの香りを、
共演したマリリン・マンソンやPIGの世界観からの刺激を受ける中で立ち返っていったのだろうか。

そんな過渡期のライヴであったような印象がある。




櫻井敦司は言う。

―――赤坂BLITZ、Zappとライヴを見せていただいて、
櫻井さんのパフォーマンスがいつになく開放的というか、
エネルギーが外に向かっていたような印象を受けたんですが、そういう意識はありましたか?

「いや、そういうのはないですね。何も考えずにその場に行って。
そういうやり取りがあったとしたら、その時の気分だけで。
自分の中では決めてないですね」

―――久し振りのライヴということで、気持ちの高ぶりはあったんじゃないですか?

「それはあったでしょうね。
前もって自分の中で決めごとは作らないんで。
その辺はラフです。カチッとしようとは思わなかったんで」

(『FOOL'S MATE』誌より)



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『fm217-bt-2-』




囁き
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



あなたは夢 私は欲情する奴隷みたい
あなたは夜 私は悦びに涙流す
あなたは月 私はドロの様に濡れたままで
あなたは密 私は垂れ流す独りきりで

欲しいものがひとつ 汚い囁きを

お前の夢 私は踏みつける子供の様に
お前の夜 私は悦びに涎垂らす

欲しいものがひとつ 汚い囁きを
願い叶うのなら 縛ってくれ

あなたは夢 私は欲情する奴隷みたい
あなたは夜 私は悦びに涙流す

欲しいものがひとつ 汚い囁きを
願い叶うのなら 縛ってくれ

あなたは月 私はドロの様に濡れたままで
あなたは密 私は垂れ流す独りきりで