「深い森に迷い お前の名を呼ぶ」

マーキュリー時代の後半となった1999年の前半メンバーは長めのオフとなったが、
今井寿のみは、zilch(ヂルチ)という日本国外のミュージシャンと組んだバンド・ユニットの
ライヴ・ゲストとして参加し活動。

BUCK-TICKとしての活動再開は1999年5月、前年逝去したメンバーの親友hideの
トリビュート・アルバム『hide TRIBUTE SPIRITS』に参加し、
hide自身が何度も発表した楽曲「DOUBT」を「DOUBT'99」としてカバーしている。

その後、7月に1年4か月ぶりの新曲「BRAN-NEW LOVER」をリリースすると、
8月に入り8日、そのシアトリカルなステージが「1990年代のキッス」また、「世界最大の問題児」といわれる
ゴシックの大物マリリン・マンソン(Marilyn Manson)との
イベント【BEAUTIFUL MONSTERS TOUR】(富士急ハイランド・コニファーフォレストにて)に出演。

それに続く8月19日【ノータイトル】と題して赤坂BLITZでの唯一のワンマン・ライヴを行い、
8月23日~31日までは、かねてから親交のある英インダストリアル・ロックの雄、
PIGとのジョイント・ツアー【Energy Void TOUR】を行った。

8月23日のZepp TOKYOを皮切りに、大阪、札幌、福岡とZepp全4個所で行われたこのツアーは、
PIGとのジョイントということもあり、洋楽関係者にも注目度の高いライヴとなった。
ちなみのPIGの来日は、1997年以来3回目、2年ぶりの来日公演である。

この日もクラシカルな歌劇調のSEをバックに登場したPIG。
バンドの中心人物ヴォーカルのレイモンド・ワッツは、
黒の毛皮のジャケットに黒のブーツという黒づくめの衣装が長身に映えて十分にスタイリッシュ、
かつナルシスティックなムードを漂わせて登場したが…、
演奏に入り親交深いKMFDMのTシャツ姿に変わるとアグレッシブな姿勢に早変わりした。

更に驚かされるほどハード&ラウドなサウンドは、レベル(音量)が大きいということもあるが、
その迫力はまさにド肝を抜くという感じであった。
特にドラムのアンドリューは、当時、各方面から引っ張りだこの売れっ子だけあって、
そのパフォーマンスは素晴らしく、彼らのパワフルな演奏に支えられ、
レイモンド・ワッツの呪詛をまき散らすようなロウ・ヴォイスが、あたりを圧するが如く響き渡る。

その拡声器でアジテーションするようなヴォーカルから、
果ては客席にダイヴするなど気合いのパフォーマンスを見せていた。



そのあとを受けて登場したBUCK-TICKは、PIGのステージに良い意味で刺激された部分もあっただろう。
前回の赤坂BLITZのドラマティックでカオティックなライヴから一転して、
タイトでビルドアップしたライヴを見せてくれた。

フルのステージとは違い、時間的にも限定された中で、
ステージ最前で櫻井敦司が客席にマイクを突っ込むなどのシーンもあり、
非常にテンションの高いステージングで、
“ライヴは生き物”というパフォーマンスを繰り広げた。

同じように打ち込みと生楽器の融合を試みながら、
重戦車のような強力なパワーで押してくるPIGと、
多彩で変化に富んだ楽曲でドラマを作り出すBUCK-TICK。

両者の間にあるのは、単純なバンドの差異だけではなく、国民性の違いでもあるように感じられる。
ともあれ、カルトな意味で日英を代表するバンドを一気に体験出来る貴重なライヴ・ツアーとなった。

映像は、衛星放送で放映された8月23日のZepp OSAKAでのステージで、
中規模会場の臨場感極まる“スぺーシー”なSEから、
BUCK-TICKの代表的グランジ・へヴィ・ロック「唄」でのオープニングとなった。
効果音の少ない中、ラウドなギターがカッコイイ、ライヴなサウンドだ。


fm217-bt-1
『fm217-bt-1』




 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


どうして生きているのか この俺は
そうだ狂いだしたい 生きてる証が欲しい

神経は落ちてくばかりで 鼓動はずっとあばれ出しそうだ

深い森に迷い お前の名を呼ぶ

逃げ出すことも出来ない 立ち止まることも知らない
聞いてくれこの声 お前を愛しているのに

抱いて慰めてくれ そう甘く
だめだ溺れてしまう 優しい君の中

誰も泣きたいはずだろ 優しくきっとされたいはずさ

熱い肉の軋み お前にこの愛

生きる事はできる 消えていくすべを知らない
この手伸ばしている お前を愛しているのに

ああ この世で美しく ああ 限りないこの命
ああ この世で激しく ああ 燃えろよこの命

どうして生かされてるのか この俺は
そうだ叫びだしたい 生きてる証が欲しい

神経は落ちてくばかりで 鼓動はずっとあばれ出しそうだ

熱い皮膚の裂け目 吹き出すこの愛

消える事はできる 生きてゆく意味知らない
この手伸ばしている

逃げ出す事もできない 立ち止まる事も知らない
聞いてくれこの声 お前を愛しているのに

ああ この世で美しく ああ 限りないこの命
ああ この世で激しく ああ 燃えろよこの命