あなたにBUCK-TICKは必要か?

映像は音楽雑誌JROCK誌が、ピックアップしたアーティストのインタヴューを行った
宣材番組であるが、極彩色の小宇宙を描ききったアルバム『COSMOS』について、
メンバーが印象を語っている。

バンドもしくはアーティストが、自己表現を実現するために、
そのリスナー(ファン)を突き放しているような音(作品)を世に出すことがある。

これは音楽に限らず、物を創作する者、
すなはち、画家、作家、その他の芸術家と称される人物について言えることであるが、
何らかの本質に気が付いてしまった者は、それをアウトプットして、
世間に知らしめる宿命を背負って生きているのかも知れない。
例えそれが受け手が求める本質と違っていても……。

そういった意味では、この映像でBUCK-TICK櫻井敦司に対して投げかけられた少し酷な質問も、
クリエーターとしての成長の証に他ならない。

たとえ、それが本人の意思とは、違っていても、
何らかの本質=真実に到達してしまったのなら致し方ない現象である。

近年(結成20周年の時)にNHK BS2の音楽番組「BEET MOTION」に出演したBUCK-TICKメンバーが、
司会のSOPHIAのヴォーカリスト松岡充に
「20年間、BUCK-TICKは、誰の為に音楽を続けて来たんでしょう?」
という質問をされ、

櫻井敦司が、

「それは、自分の為ですね」

と答えていたのが、印象的である。

櫻井敦司曰く
「それは、リスナーの為と皆言いたいだろうが、自分が楽しくなければ、皆も楽しくないでしょうね」
ということで、歳月を経て、こういった結論を導き出して熟成していった
BUCK-TICKというバンドの年輪を感慨深く感じた。

しかし、この当時には、この答えにまで至っておらず、

「突き放しているつもりは……ない……」

と感じている櫻井敦司の姿もまた当時のリアルな姿であろうと思う。

そして徐々に櫻井敦司も自己客観視し、自分のダークなキャラクラーを
擬態化してコントロールしていくようになる。
その第一歩が、この突き抜けるようにポップな「キャンディ」を始めとする
アルバム『COSMOS』でのヴォーカルであったろう。


一方、今井寿は、『COSMOS』リリース時のキャッチーな曲構成が、
デビュー当時の原点回帰だという説に対して、

「俺は……、イヤです……」
と語っている。


この年10周年を迎え、
「BUCK-TICKも一回転したんじゃない?」
と素直に語るヤガミ“アニイ”トールと好対照で面白い。
まるで、子供と大人の見解の違いみたいだ。

同じバンドのメンバーながら、決して意見を統一することのない姿こそ、
自然体のバンドという生命共同体“BUCK-TICK”の本質であろう。



では、
もう一度問おう。

あなたにBUCK-TICKは必要か?

その答えもまた自由だ。