「パンドラの箱を今 アケハナテヨ」
前作「月世界」から14ヶ月ぶりにリリースされたMAXIシングル。
タイトルの「BRAN-NEW LOVER」を始め収録された3曲とも非常に印象深い作品で、
それぞれの個性的な“オーラ”を纏ったBUCK-TICKの切り口となった。
全曲オリジナル・アルバムには未収録だが、マーキュリー時代のベスト盤『97BT99』と
BMGファンハウス移籍後のライヴ・アルバム『ONE LIFE, ONE DEATH CUT UP』に収録されている。
※収録楽曲
01.BRAN-NEW LOVER
02.DOWN
03.ASYLUM GARDEN
BUCK-TICKのバンドとしての特徴として、
メイン・コンポーザーの今井寿の性格も関係あるのかも知れないが、
『darker than darknessーstyle93ー』『Six/Nine』でダーク世界を描いた後、
世間が、カルトな存在として彼らを評価しようとすると、
『COSMOS』のキャッチーな歌メロを大胆に導入し、王道ギター・ロックを展開し、
期待を裏切るという“意外性”がある。
天の邪鬼と言ってしまえば、それまでであるが、
ある一定の評価を得てしまうと、そのジャンルに安住しようとはせず、
予想外の展開に持ち込むのが“特技”のひとつと言えるだろう。
今回のMAXIシングルもまさにその典型で、
タイトル・トラックの「BRAN-NEW LOVER」は、
『SEXY STREAM LINER』で構築した“狂った感じ”“怖い感じ”の
無機質緻密機械の打ち込みループとバンド・グルーヴの融合ハードテクノの世界を、
もろに破壊するかのような明るくキャッチーなナンバーで、
「キャンディ」以上のポップ感覚テクノである。
例えるならば、
YMOが1970年代後半に巻き起こったテクノ/ニュー・ウェイヴのムーブメントの中、
トランス・テクノ・インダストリアル・エレクトロニカと
前衛的な実験サウンドをさんざんやったあげくに、
1982年に入り、一転して歌謡界に殴り込みをかけ、
ソロ活動でも細野晴臣「はっぴいえんど」での盟友松本隆と共に松田聖子への曲提供を行い、
坂本龍一は郷ひろみや前川清などのプロデュースを行って評価を煙に巻くと、
また、日本グラムロックの大御所、忌野清志郎と共に
シングル「い・け・な・いルージュマジック」をリリースし注目を集め、
次は映画『戦場のメリークリスマス』の撮影に俳優として参加し、映画音楽に参入したような
“意外性”を演出した例が浮かぶ。
更に例えるならば、「BRAN-NEW LOVER」は、
そのYMOが音楽活動を本格再開したアイドル・ポップ「君に、胸キュン。」を思わせる出来だ。
ここまで、振り切ったポップさは、BUCK-TICK史上でも類を見ないし、
前シングルがアンビエントなアーティスト志向の「月世界」であった点も、
この“意外性”という落差を更に印象付けることになった。
櫻井敦司の歌詞も「キャンディ」以上のポップさで、
キャッチーなアルバム『COSMOS』のモチーフとされた童話『北風と太陽』からの
“北風”で始まる遊び心も満載な内容で、タイトル通り、
新世紀を祝う“スペイシー”で今までになかった位に“ポジティヴ”である。
(※実は、人類終末をポジティヴに描くという捻ったコンセプトも有しているのだが…)
映像のヴィデオ・クリップでも、遊び心一杯のサイバーな出で立ちのメンバーが躍動する。
拘束衣の櫻井敦司は、少し狂喜の「MAD」や「密室」などを思わせるが、
これまた今まで見たこともない“険”の取れた表情で、ルックスさえもキャッチーなイメージである。
(※しかし、これまた最後には、うつ伏したまま動かなくなってしまう。これは“死”を表現したとされる説もある)
カップリング曲もBUCK-TICKの名作で
「DOWN」は、『Six/Nine』での楽曲を思わせるスリリングでヘヴィーなグランジ・ロック・ナンバー。
「ASYLUM GARDEN」は、星野節ミディアム調で、
精神に突き刺さるような浮遊感が堪らないダーク・ロック・ナンバーに仕上がっていた。
「人間にはさようなら いつか来るじゃない 」
BRAN-NEW LOVER
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
北風が全てをさらってしまう
怖がらず目を閉じ抱き合っていよう
最高の瞬間 未来は君の胸で溶けちまえばいい
君が泣き出すなら雨へと変われ
君が見えなくなるなら闇夜に染まれ
悲しい夢も 未来も君の胸で消えちまえばいい
パンドラの箱を今 アケハナテヨ
千切れ欠けてメビウスリングトキハナトウ
世界ノ終わりなら 真夏の海辺
怖がらず目を閉じ抱き合っていよう
最高の瞬 未来は君の胸で溶けちまえばいい
悲しい夢も 未来も君の胸で消えちまえばいい
人間にはさようなら いつか来るじゃない
この宇宙でもう一度 会える日まで...
パンドラの箱を今 アケハナテヨ
千切れ欠けてメビウスリングトキハナトウ
人間にはさようなら いつか来るじゃない
この宇宙でもう一度 会える日まで...

