「Believe It Future Rise Abobe Yourself!!」



「MY FUCKIN' VALENTINE」こそがBUCK-TICK史上最も攻撃的に、
ハードコア・テクノを追及した楽曲であるのは、間違いな事実であり、
また一大ブームを巻き起こしたトランス/レイヴを融合させたBT代表楽曲で、
まさにavexミュージックが全盛を極めた当時の日本音楽界に警笛を鳴らす存在となった。
そういった意味では、先行シングル「ヒロイン」以上にセンセーショナルで、
新作アルバム『SEXY STREAM LINER』を象徴する一曲である。

また、この楽曲で、今井寿は完全にギターを手にせず、
新兵器“テルミン”を最大限に導入して、
ミキサーDJとして、そして、アヴァンギャルドなメイン・シンガーとして君臨している。
かと言ってこの楽曲の凄さは、そういったトランス・ミュージックへの参入のみならず、
間奏で挿入されるスケール感の大きな星野英彦のカッティング・ギターのアンサンブルや、
それまでのバンド形式以上のグルーヴを見せるヤガミ“アニイ”トールのジャストなドラム。

そして、細やかな配慮でバンドの土台を守る男
樋口“U-TA”豊のセンスであった。

ループやシーケンサーがあらかじめ入っているトラックにベースを入れていくのは、
これまでとはかなり異なる作業だったにも関わらず、
人間のノリと機械のノリの絶妙なマッチングを聴かせてくれる。
アルバム『SEXY STREAM LINER』はギター・サウンドが減少したこともあり、
彼の太いベース・ラインがかなり印象的だ。
我らがU-TAは、それをどのように感じているのだろう?

以下、『UV』誌より、引用、抜粋。

―――今回はベース・ラインが印象に残りますよね。ギターが減ったせいかもしれないけれど。

樋口“U-TA”豊
「自分でも面白いなって思います。インパクトあるものが多いなって。
難しいことはしてないんだけれど。でも、レコーディングは難しかったです」

―――それはどういうところが?

「ループさせれば、1回弾けば済むじゃないですか。
でも、そういう感じじゃなくするためには自分で弾かないとイメージが出てこないし。
それはシビアに言っちゃうと、すごく難しいことで。同じフレーズをずっと弾くことだし。
そういうところですね」

―――人間シーケンサーと化して弾くしかない?

「遠くを見つめながら(笑)」

―――苦労した曲ってどれでした?

「「MY FUCKIN' VALENTINE」ですかね。
打ち込みっぽいんだけど、リズム隊が勢いがなくならないように人間らしいリズムを出して。
カッチリしなきゃいけない、でもカッチリしすぎるといけない、という。一番中途半端な(笑)。
荒れてるけどキッチリさせるという、ものすごく難しかったです。
「無知の涙」とかって、今までのウチらになかった曲かなという。
少しこのアルバムでは浮くかもという気もしますけど、でも面白いです」

―――1曲ごとのカラー、強いですよね。

「ええ。曲順はそんなに苦労しなかったですね。
あと最後の「キミガシン..ダラ」。ウチららしいなって。
不思議なところを走って、最後で抜けるという」

―――結果的にギターの比重がこれまでで一番少ないアルバムですけど。
それはそれで曲に合っていれば構わない?

「そうですね。今井君のシンセを使うし。
これでシンセを弾かない人のアルバムだったら、大丈夫かなと思うけど。
2曲目の「SEXY STREAM LINER」にあるSEの感じっていうのが
俺自身は今回のテーマっぽいかなって思ってるんです。
打ち込みとバンドの融合というか。
1曲目に「タナトス」みたいなバンド色強いのがあって、そこで紹介みたいな始まり方をするし」


以上、引用。

そして、またもやこのハイパー・トランスに奇才=今井寿の歌詞が載るのだ。
櫻井敦司とのダブル・ヴォーカルは、「Madman Blues -ミナシ児ノ憂鬱-」をも凌駕する
“スピード”感と時代性を具有している。
今井寿は音感を重視し、歌詞に「ル」を含む単語を多用しているのが特徴で、
いかにも、ラップ・ミュージシャン的なアプローチであり、
コンポーザーとしての音感での【ことば遊び】は名人芸と言える。
シリアスな作風の櫻井敦司には、考えられない境地とも言えよう。

『FOOL'S MATE』誌で今井寿は語る。
以下、引用、抜粋。

―――「MY FUCKIN' VALENTINE」は?

「これはただ単に煽る曲がほしいと思ったんです。
だから(ヴォーカル・アレンジを)掛け合いにするようなアレンジにしました」

―――ハーコア・テクノ的な印象があります。

「ええ、そうだと思います。ハードな曲に打ち込みやサンプリングを導入しましたからね」

―――この曲の歌詞も今井さんですよね。
「リザードスキンの少女」と同じように、原曲を作ったときから“俺が書くんだろうな”と思っていたんですか?

「そうです」

―――いろいろな言葉の羅列による歌詞になっていますが、使っている言葉ひとつひとつのインパクトが強いですよね。
汚物とかスカトロ、イリーガルとかケミカル、さらには射精だの女装の紳士だの、やばいっすね。

「ええ。そういうエグい部分を狙いましたね」

―――今の時代を風刺した意味合いもありますか?

「あまり深くは考えていなかったけど、この時代に生きているから自然に出てしまうんでしょう。
そうやって出てきた言葉をパズル的に組み合わせて書いたんです」

―――そういった言葉の羅列は、自分にとってアプローチしやすいですか?

「そうですね」

―――ストーリー的な歌詞よりも?

「比べるとどうなのかわからないですけど、やっぱり俺はヴォーカリスト的な発想の歌詞ではないですね」

―――言葉の持っているテンションや質感が、今井さんの出すギター・サウンドやアプローチに近いですよね。

「そうなんです。そういう感じだと思いますね」

―――曲名になっている言葉の真意を教えてほしいんですよ。

「意味ないんですよ(笑)。こじつけというか。言葉としてつながりもないんです。
ただ、その言葉がポンと出てきて、おもしろいな、これ使いたいなと思って」

以上、引用。



この能天気とも言える思いつきが数々の歴代の名作を生み出す。
天才の脳ミソの中には、渦巻く妄想と、果てしなく広がり続ける宇宙がある。
その中で醸造される“思いつき”というアイデアはきっと、
ある種の“神の声”のように、囁き続けているのだろう。

映像のこの日の今井寿のMCは、
「今日の取っておきのヤツをやります」
ということで、この【SEXTREAM LINER TUOR】の一番の見せ場であった。


今井寿は時代を煽る―――

「Hail Psycho Bitch Rise Abobe Yourself!!」


MY FUCKIN' VALENTINE
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



Believe It Future Rise Abobe Yourself
Believe It Future Rise Abobe Yourself
Believe It Future Rise Abobe Yourself
Believe It Future Rise Abobe Yourself

You are My Fuckin' Valentine
You are My Fuckin' Valentine

病める時代のヴァーチャル
つながる ケーブル
流れる パルス、ウイルス
走る 未来は リアル
スリル・キラーは シリアル
暴れる発情 マテリアル

極彩色 ハイ・テンション
汚物にまみれ スカトロの空
Hail Psycho Bitch Rise Abobe Yourself
情報操作 インフォメーション
盗聴、パクリ 電脳戦士
Hail Psycho Bitch Rise Abobe Yourself

You are My Fuckin' Valentine
You are My Fuckin' Valentine

イリーガル・パウダー・ニードル
ピュア・ケミカル
乱れる・ピルス・ウイルス
万物の霊長 気取る
高級なサル
くわえる射精 マテリアル

マゾヒスト ハートブレイカー
女王様たち そそる未来
Hail Psycho Bitch Rise Abobe Yourself
女装の紳士 バイブレーター
素敵な悪趣味 震える未来
Hail Psycho Bitch
You are My Fuckin' Valentine