前々回の続き、TVK音楽情報番組『ミュージッククリーク』に出演時の映像である。
いつも以上に硬質な感覚のインタヴューになっているが、
司会者の質問には、いつも笑わせてもらえる。
特に、櫻井敦司への
「ラ、ラーメンとかも食べるんですか?」
という質問は傑作である。

確かに、この時はまるでサイボーグのような無機質なイメージが櫻井敦司には漂う。
病的なまでの美しさは、美人薄命ならずもその闘病の結果、身に纏ったのかも知れない。

いずれにしろ、新作「ヒロイン」とニューアルバム『SEXY STREAM LINER』は、
その“ハード・テクノ”な内容とぶっ飛んだイメージが特徴的で、
ややキャッチーな歩み寄りを見せた『COSMOS』とは根本的にアプローチが違っていたし、
それまでのどの作品よりも、吹っ切れた音への追及が、BUCK-TICKの内面へ突き刺さっていくような作品だ。

コアなBUCK-TICKフリークを自称するLUNA SEAのベーシスト“J”は、
アルバム『狂った太陽』は、イメージとして外側に広がる世界感があったが、
今回の『SEXY STREAM LINER』は逆に、インナーなスペースへ向けて発信されているようだ。
と今井寿との対談で語っていたが、
その通りであり、
今までのどのアルバム作品よりも、個人的内向性質の音創りが実行されていた。

インタビューでヤガミトールも語っているが、
BUCK-TICKソングライティング行程は、おもにコンポーザーの今井寿と星野英彦が、
個人的に作成したほぼ完璧に世界感を表現したデモテープが持ち込まれ、
(そのデモには、作曲者の鼻歌や効果音的SEやノイズ等も明確に入っているという)
リズム隊の樋口“U-TA”豊とヤガミトールが先行してスタジオに入り録音していくところから始まる。

このリズム録りで、楽曲の骨格が決定するのであるが、
楽曲によって、ベースフレーズのアレンジやドラミングに関して、樋口ヤガミ担当者に任されるものもあれば、
コンポーザーに細かく「ここはこういう風に」と指示を受けるものがあるそうだ。

そこに、いつもならば今井&星野の空気感を表現するギターが被さるわけであるが、
今回の『SEXY STREAM LINER』に関しては、ギタリスト二人供が、ギターよりも、
マニピュレーターの横山和俊との打ち込みループや効果音の挿入に苦心がなされていたようだ。
すでに今井&星野は、ギタリストというアイデンティティになんの意味を見出していなかった感すらある。

その楽曲が、作詞家&ヴォーカリストの櫻井敦司のもとに渡り、
BUCK-TICK楽曲が完成を見ることになる。
(他のメンバーが歌詞を担当する場合も、櫻井敦司に断ってから作成に入るらしい。
 例えば今井寿作詞の楽曲は「これは俺が書いてもいい?」と櫻井に訊くのだという)

バンドとしてのグルーヴや一発録りのライヴ感的なものは、ここにはないが、
より精密な世界感の実現の為、初期作品以外は、この工程でBUCK-TICK楽曲は出来あがっているようで、
また、この頃から、ライヴでの再現性を重視した曲創りではなく、
どこまで精密にメンバーの頭の中の世界を表現出来るかにフォーカスされてレコーディングされていたようだ。
よって、他の誰にも創ることに出来ない世界がこの頃のBUCK-TICK楽曲には充満している。
“J”が、インナーに向かっていると表現したのも最もだろう。

正直、この先鋭的な新作『SEXY STREAM LINER』は、こういった内向性の為、
『Six/Nine』の感情むき出しの世界よりも、さらに難解とされ、
一部の評論家はアヴァンギャルドで、前衛的と評価したが、
一般のリスナーには、やや障壁が高く、素直に入り込める世界ではなかったかも知れない。

誤解を恐れず言えば、
そんな排他的な雰囲気が、このインタビューからも滲み出ていないというと嘘になる。