『市川哲史の酒飲み日記 on TV』はBS放送で放映された『スペース・シャワーTV』のワンコーナーで、
雑誌『音楽と人』の市川哲史のコラムが映像として実現されたている。
内容の方は、音楽、プラーベートと多岐に渡り、
本当に酒場で語りあっているような取材で、BUCK-TICKメンバーも珍しくリラックスして話している。
特に、今井寿が音楽以外の事とマスメディアで話しているのは、
やはり市川哲史との親交の深さを感じざるえない。
映像は、見て楽しんでいただければ良いとして、
記事は、この番組が放映される直前に発売された『音楽と人』から
今井寿、櫻井敦司のインタヴュー記事を要約抜粋して、
『COSMOS』というアルバムの本質に迫ろうと思う。
まず、今井寿はこの『COSMOS』レコーディング中に、童話『北風と太陽』が浮かんだという。
以下、抜粋。
●●自分でも「ここんとこシリアス過ぎた」って自覚はあったんだ。
今井「今回に比べれば」
●●「少し窮屈だったなあ」的反省が今になって。
「勿論その時は全然なかったけど。今になって聴けば『そうなのかな』って思うし」
●●でも実際に過去の作品は凄いシリアスで。
「ええ」
●●そういう意味では、単に青臭いわけではなくあえて青臭い、笑える事を意識して演ったわけだ
――その必要性を感じて。
「ええ、そういう余裕な感じを出したかったから」
●●自分でやってて可笑しかったろう。
「気持ちよかったですね、ええ。あ、“キャンディ”の唄入れの時に――音をレコーディングしてる時漠然と『何でこんなポップなサビがばんばん出てくる曲作ってだろうなあ』と自分でも思ってて――アッちゃんの唄録ってるのを見てて、ふと童話の『北風と太陽』が浮かんできて(笑)」
●●旅人のコートを北風と太陽が、どっちが早く脱がすか競争する話ね。
「ええ、ええ。あの太陽の気持ちがぽーんと出てきて(笑)、自分でも驚いて。そのままスタジオで『どんな話だっけな』と考えていたら、何となく辻褄が合うというか『ああ、そういう事なのか』と気付いて。だから、今までが北風の気持ちで無理矢理脱がそうとビュービュー風吹かしてわけじゃないけど……」
●●ああ、凄い風速でコートをひっぺがそう的な、発想としては間違ってないんだけども逆効果というね。
「ははははは。寒いからよけい脱がないのに」
●●シリアスなBTは確かに北風的だよな。もっと言えば、シリアスで凄くへヴィーな世界をしっかり構築すると一度その中に入った人間は二度と外には出られないけど、よく考えたら外から誰も入れないと思わないか。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ」
●●入っちゃった人は虜なんだけども、その虜を増やせないというパラドクス(笑)。そういう意味じゃ、櫻井もそういうの肌で感じてたと思うんだ。だからこそ今回、詞も音同様に突き抜けてる。
「でも、いつものアッちゃんじゃないですか」
●●うん、表面的に使われている言葉や言い回しは、例によって必殺自己否定ターム群なんだけども、中身は実はお気楽なラヴソングだったりするわけじゃん。非常にわかり易い。
「ははははは」
●●自分で自分らしさを笑いながら使ってる。その辺、偶然なんだろうけども今回の今井も櫻井も視点は一致していると思うんだよね。
「上手くシンクロするんですよ、毎回毎回」
●●そういう意味じゃ、笑われて本望なアルバムだと思うよ。タイトルも『北風と太陽』が最適だったんじゃないか?(笑)
「ひゃひゃひゃひゃ。だけど今までが北風だとは言ってないですよ。俺は。
市川さんですからね、言ったのは」
●●(笑)あ、防御の態勢に入ってんな――。
「ふふふふふ」
●●じゃあ改めて訊くけども、自分としては『COSMOS』をどんな作品だと捉えてますか。今までの話を踏まえた上で。
「……スペイシーなアルバム(笑)」
●●(苦笑)全っ然わからん。
「いやでもコンセプトとしてはあったんですよ――『あったんですよ』というのもアレですけど」
●●今はもうない的な。
「はははは。さっきどっかの取材でインタヴュアーからスペイシーって言葉が出てきて、『あそういえばスペイシーってコンセプトあったなあ』と今思い出した(笑)。本当に!」
●●わすれれるとはいい加減な――君の言うスペイシーってどんなニュアンスなんだ?
「勿論、宇宙とか秩序とか、まとまりの感じ。もありつつ、ただ単にふわふわしているんじゃなくて……わかんないけど……スペイシーな感じ(笑)」
●●ふはははは。すまん!俺には理解出来ん!!
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
●●とにかく私は優秀な「笑われてなんぼ」の作品と思っているので。
「何か格好悪いアルバムに聞こえちゃうなあ。そういう言い方だと(笑)」
●●それだけわかり易いって事さね。
「ええ、わかり易いですよ」
●●あとツアーは楽しみだな。“キャンディ”とか“Ash-ra”を真面目な顔して唄ったり弾いたりしている君達の姿を想像するだけで、腹わたがよじれそうなるよ。
「曲作ってる時から、自分でもそういう想像してました(笑)。今“キャンディ”の最後どうしようか悩んでて(笑)」
●●うわ、また即物的なこと考えてんな――。お前全然「スペイシー」じゃないよそれ。
「ばひゃひゃひゃひゃ!!どうしようかなっと、本当に。誰か終わらせるまで終わんないからね(笑)」
●●笑いに行くぜ!
以上、抜粋。
このように非常に笑いの絶えない内容の記事になっているが、
これは、市川哲史との関係だけでなく、今井寿がそしてBUCK-TICK自体が、
そういう雰囲気の中にあったことを示している。
実際、『COSMOS』のライヴツアー【CHAS TOUR】で、今井寿は、
光るゴーグルやら、鳥の被り物やらが登場して賑やかなものとなった。
