渾身のアルバム『Six/Nine』のセンセーショナルな活動再開の後、
誰もがBUCK-TICKは、何処に行ってしまうのだろうか?
とその動向が推測されたが、『darker than darknessーstyle93ー』
そして、『Six/Nine』の活動を通じて極めたそのダークな世界感からさえも
BUCK-TICKは脱却を図ったとされる。
実は、今井寿は、
タイトル通りの暗闇からの一撃『darker than darknessーstyle93ー』をリリースした後、
恐らく、BUCK-TICKは、ポップな路線に再び戻るだろうと予想したメディアの
裏をかくためにも、更にディープな『Six/Nine』世界を描くことに決めたという説を公言していた。
これは、彼の“反骨精神”以外の何物でもないが、
ここに来て、1996年5月22日にニュー・シングル「キャンディ」リリースすると、
これがまたBUCK-TICKにしか出来ない類のポップ・センスにあふれた楽曲であったので、
いったいBUCK-TICKに何が起こったのかと話題を呼ぶことになった。
印象的なイントロで始まる新曲極彩色ROCKとも言われた「キャンディ」の
ヴィデオ・クリップも話題となったが、ここで登場したメンバーの姿も驚きを感じざる得ない。
前作『Six/Nine』のゴリゴリのロック色の強いルックスから一転、
カジュアルなファッションに身を包んだメンバー。
特に、長髪にドレッドを掛けた今井寿とブラックのスーツに髭の双子のヤガミ樋口兄弟!
このヴィデオ・シューティングは北海道の小樽で行われ、
GUNIW TOOLSの古川ともが同行して撮影を行った。
「以前から、小樽のこの場所は照明を持ち込んで撮影したかったところです。
僕も忙しくて、北海道に帰れなかったので、今回のビデオにかこつけて帰りました(笑)。
ま、今までのBUCK-TICKの作品を見ていると、
5人のバランスを考えすぎてたように見えるので、
メンバー1人1人のキャラクターを誇張してでもバンドとして一塊みたいにしたいなと。
全体を通して、さわやかに暗黒みたいなところを狙って、オブジェなんかも作りました。
今回のキーポイントは、
ユータさんとアニイさんの兄弟のカラーを強めて
アンダーグラウンドの基本パターンとも言えるテーマ双子をスパイスにした点でしょうか。
こわい中にもプリティみたいな」
(古川とも)
このヴィデオ・クリップの通り、先行シングルから一月後の6月21日に発表された新作
『COSMOS』で再び姿を現したBUCK-TICKメンバーは、
ポップな曲調に合わせて、衣裳もスポーツブランドなどを多用。
いままでのBUCK-TICKのダークなイメージとは違う一面を見せていた。
しかし、新アルバム『COSMOS』の内容は、ただ明るいだけではなく、
いままで今井寿が描こうと苦心していた宇宙的なアプローチを実現し、
シンプルな美しさと供に、大胆に取り入れたノイズ・アートの傑作となった。
同時に結成10周年を迎えたこの年、
BUCK-TICKは、ちょうど一回転で原点回帰したとされたが、
こういった評価に対して、今井寿は「そんなつもりはない」と語っている。
彼にしてみると『darker than darknessーstyle93ー』や『Six/Nine』の
“小難しい”ロックを期待していたメディアの裏をかいた、
これも、“反骨精神”であったかも知れない。
今井寿の意図はどうあれ、この「キャンディ」で
BUCK-TICKの制限は皆無となった。

『oth32-bt-7』
キャンディ
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
僕の箱庭にキャンディ しきつめて
「これが君だよ」と 優しく微笑みかける
ああ 何もない この地球にただひとり
愛する人が見えた この地球に
君は名前をLove you そう告げた
何も欲しくない 全ては目の前にある
ああ 手足を目を無くし 心が
あなたの胸に触れた その胸に
僕はいきたい 神の導くままに さあ ふたりだけで 突き抜ける
黒の悪魔が 愛 呑み込んだ
目には見えない 全てを真実とした
ああ 何もない この地球に
そう真っ赤な 花が一輪 咲いた この地球に
そう真っ赤な 花が一輪 咲いた この地球に
僕は見たい 神が微笑む場所を さあ向こう側へ
君といきたい 神の導くままに さあ ふたりだけで 突き抜ける
突き抜ける 突き抜ける 突き抜ける ・・・
