【新作再生劇場版】のヴィデオクリップ「愛しのロック・スター」では、
過去のBUCK-TICKの映像作品が、当時現在のBUCK-TICKの姿にフラッシュバックしている。
メジャー・デビュー・ヴィデオ作品「SEXUAL×××××!」から当時最新の「唄」までが、
順序良くフラッシュバックされ、それまでのBTの軌跡が見られるのと同時に、
そこに皮肉めいた櫻井敦司の歌詞にある通りにロックアイドルBUCK-TICK自体を
あざけ笑うかのような趣向もあった。
「人気者はごめんだ 道化者は楽じゃない 」とばかりに・・・・・・


ここで唄われているのは、ヴォーカルの櫻井敦司自身の事で、徹底的に自分を卑下している。
それは一貫して貫いている彼の自己否定美学にも通じるが、
ここまで、自分をサルだ、ブタだとストレートな表現にしたのは、
「愛しのロック・スター」の曲調がそういった人をおちょくるような感じに聞こえたからのようだ。
デモを聞いたときに櫻井敦司は、作曲者の星野英彦に
「(ツインヴォーカルで)歌ってみる?」と誘ってみたが星野に断られたらしい。

変わって櫻井敦司が大ファンであると公言しているDER ZIBETのヴォーカリストISSAYが参加している。
このオファーは櫻井敦司自身が直接ISSAYに電話をかけて行われた。
以前、ISSAYのソロアルバム『FLOWERS』にゲスト参加したこともあり、交渉はスムーズであったと聞く。
櫻井敦司は、この時、「恋のハレルヤ」の印象が強く、音楽ライターの市川哲史によると
―業界初の同性愛デュオと呼ばれていた。
櫻井本人も「俺こういうのが 唄いたいんですけど、B-Tじゃ誰も作ってくんなくて」と語っている。

またB・PASS誌のインタヴューでは、

●ISSAYさんと一緒に「愛しのロックスター」を歌ってるね。

櫻井「ええ。以前ISSAYさんのソロの時に僕はコーラスで参加させてもらったんですけど。
この詞は悩みました。全部自分に返ってくればいいんだけど、
自分と同じようなスタイルの人達がイヤな感情を持ったらヤダなぁと思って」

●そういう部分が櫻井敦司の優しさなんだろうな。何を言われようが歌うぜ!文句あるか!!ぐらい思えれば、
もっと楽なのに。

「ISSAYさんにも言われて・・・・・・“大丈夫だよ”って彼に言われたから、立ち直れたんですよ。
この詞は変えようとまで言ってたから・・・・・・
ISSAYさんなくしては、この詞は完成しなかったですね。
ほら・・・・・・まったく堂々となんてしていないでしょ(笑)」

以上、引用。

という感じてISSAYへの感謝とリスペクトを表している。
また、市川哲史の「酒呑み日記」でもISSAYと櫻井敦司の親密な関係が書かれている。

【音楽と人】1995年9月号

あとのまつりより。

6月27日 火曜日。
 13時、はるばる沖縄で櫻井敦司+ISSAY「真夏のデカダンス対談」。
沖縄本島から小舟で30分の「神の国」久高島で撮影なのだが、
例によって櫻井が現れない。前夜の呑み会で、今井寿を市川が挑発した。
「明日は昼間っから島に行って写真撮るけど、冷たーいビール呑みながら
真夏の中過ごすのって最高だぜ? 明日1時今井も来い来い来い」
「う……起きれたら行きます」「無理しなくてもいいよぉ」
「行きます!」。誰も信用してなかったのだが、12時半頃ロビーに
ジャージ姿の今井が登場し、スタッフに「まだ大丈夫?」
「1時集合ですよ」「よかったあー」速攻で着替えた今井は櫻井より
早く集合したのだ!「起きたら12時過ぎてて、やっべえーって慌てました」。
一寸の今井にも五分の魂。
 目茶苦茶揺れる船にもめげず、気温34℃の島に14時半上陸。
帰りの船は16時出航しかなく、ハイスピードの撮影だ。堤防脇の珊瑚の岩場で、
写真通りの重装備ヨーロッパ仕様の二人がポーズする――
汗をだらだら流しながら。ちなみに一行はその間、穴から出てくる
足の長いヒトデや岩場を走る便所虫、浅瀬を泳ぐウツボにいちいち反応して
怖がっていたのであった。あ、今井の顔面蒼白だ。
おーい、ビール呑ませてやれ――絵に描いたように完全復活する今井であった。
 なお126頁の写真で、中睦まじい「昭和熱海デカダンス」カップルの
仲を引き裂かんばかりに、岩陰から覗いているの小悪魔は勿論、今井である。
 さてぼろぼろに疲れた市川一行を待っていたのは、『酒呑み日記』でも
触れたランパブ「ドリカム」! この店は下着姿のお姉ちゃんが横に
座るのは当然の事、30分に一度ドリカム名物トークタイムってのがあって、
お姉ちゃんが膝の上に乗ってお話し、あげくの果てに顔の5cm前で
股間を揺らしながら踊ってしまうのだ。しかも、よりによってこうした
風俗が最も無縁のISSAYがそれに当たってしまった。
ひたすら全身硬直し瞳孔開いたまんまのISSAY――「ISSAYさん大丈夫スか?」
と遠くに座ってたユータが走り寄ってくる。終わった後のISSAY曰く
「死ぬかと思ったけど大丈夫、ずっと敦司の手を握り締めてたから。」えーっと。


以上、引用。


またヤガミトールも
「リンゴ・スター(THE BEATLESの)みたいなドラムが叩けた」
とお気に入りの一曲。


bp113-bt-16
『bp113-bt-16』



愛しのロック・スター
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)



道化の化粧 派手な衣装で 芝居がかってるチャリティーショー
意味もなく喚きちらし あとでひざをかかえる

悲しい詩人 酒に溺れて 神秘の影をまとう
涙をほんの少し 貰えたら幸せ

人気者はごめんだ 人気者は僕じゃない

両刃の剣 裸になれば 上も下もない水平
可愛想 可愛想だ 生きていても淋しい

道化者はつかれる 道化者は楽じゃない

わたしは生きてる

もし僕がブタになっても君は 微笑う
もし僕が虫になっても君は 微笑う

道化の化粧 派手な衣装で 芝居がかってるワンマンショー
訳もなく騒ぎまくり 独りマスターベーション

人気者はごめんだ 道化者は楽じゃない

わたしは生きてる

もし僕がブタになっても君は 微笑う
もし僕が虫になっても君は 微笑う

もし僕がサルになっても君は 微笑う
もし僕が星になっても君は 微笑う

もし僕がブタになっても君は 微笑う