1983年のNO1ヒット、THE POLICEの「見つめていたい (Every Breath You Take)」。
シングルカットされたTHE POLICEの楽曲の中で最も多くのセールスを挙げた楽曲であり、
THE POLICEと言えばこの曲を挙げる人も多いが、このヒットチューンが、
実は“ストーカー”を歌った楽曲であった。



星野英彦の物悲しい美しいメロディに乗せて、
櫻井敦司の犯罪者心理描写が、奏でられる「密室」。

こういった時代背景の病理的なモチーフは、
通常、今井寿の尖った感覚で編み出されたサウンドに乗ること多いが、
今回は「ドレス」に続くメロウな美しい星野節に、物悲しく唄われる櫻井の憑依した犯罪者心理。
そして、その題材こそ“情愛”であった。

完全に切り口が社会的に批判を受ける側からの視線で描かれる櫻井の詞は、
ある意味では、現代病理小説家のような趣向があり、
こういった猟奇的な事件が多発する時代に入った問題提起のようにも取れる。

そして“罪”と自覚しつつも、“罰”を覚悟で、その“情愛”を貫いてしまう男。
人間の欲望と自覚ているが抗えない行為を表現している点では、
「楽園(祈り 希い)」「細い線」の星野作品と同様の内容の自虐世界が繰り広げられる。

櫻井敦司は俳優ではないが、こういった配役には、
恐らく、心理から憑依して役作りをするタイプの人間であろう。
心の底から犯罪者本人になりきって、詞作をするからこそ、
ここまでの描写と表現をするには、並大抵の苦心ではできないだろうから、
きっと、ここでも、血を吐く苦悩と供に「密室」が出来上がったと思うと感慨深い。

クリエーターとしての櫻井敦司のプロ意識の魂は、この“痛み”に他ならない

映像のヴィデオ・クリップには、櫻井敦司しか登場せず、
「M・A・D」以来の拘束衣に自由を奪われ、もがき、悲しむ様が映し出される。
フィードされ唄うタキシード姿の櫻井敦司の眼は、「デタラメ野郎」以上にキマっていて、
歌詞の内容を見事に演じきっている。


bp113-bt-12
『bp113-bt-12』



密室
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


君に触りたい ここには望むものはない ああ何にも
君を奪いたい全てを 誰も邪魔させない ああ誰にも
たとえ嫌われ口もきかない ああそれでも君が要れば

君 の痛み知り僕の喜びは君に そうして傍にいて微笑んで
君の傷口に僕の溢れだす愛を だから此処にいて泣かないで

あなたは僕だけのものでいて

君を閉じこめておきたい この胸にずっと ああああなたを
いつか解るさ僕の気持ちが ああこんなに君のことを

君 の痛み知り僕の喜びは君に そうして傍にいて微笑んで
君の傷口に僕の溢れだす愛を だから此処にいて泣かないで

あなたは僕だけのものでいて

僕は醜さにいつも哀れみの唄を そうして傍にいて微笑んで
僕の醜さにいつも溢れだす愛を だから此処にいて泣かないで

あなたは僕だけのものでいて

ああ何も何もない

ああ何も望まない