「相変らずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」は、見ての通り、
BUCK-TICKの楽曲の中では最もタイトルが長い楽曲で、
全編、今井寿がメインヴォーカルを担当している。

これぞBUCK-TICKのアイデンティティを確立した裏の代表曲といえる。
この楽曲をはじめて聞いた人はこの哲学的なタイトルナンバーがロックという事すら理解出来ないだろう。
永遠と繰り返される経典のような今井寿がメインのヴォ-カル、綴られて行く意味不明の歌詞。
SEかもしくは、何かの呪文を唱えているのかと思えてしまい、
なにやら如何わしさだけが印象に残るが、
聴き込むほどにこのスロー・テンポのダーク・ロックのトリコになってしまう。

そんな魅力が今井寿のヴォーカルと
この「相変らずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」にはある。

裏の代表曲というだけあって、
BUCK-TICKのオフィシャルファンクラブ「FISH TANK」の名前はこの楽曲のサカナから来るとされる。
更に、「six side is heaven/nine side is go」
とサビでの歌詞にあるとおり、このアルバム『Six/Nine』の表題曲にも当たる。
BUCK-TICKの魂が凝縮された本作『Six/Nine』の中で、
しかもその表題曲であるこの楽曲こそが当時のBUCK-TICKという存在を象徴する、
まさに「スピード」以来のBUCK-TICKの代表曲といえるだろう。


そして
「ああ、本当にBUCK-TICKは麻薬そのものだ・・・」
と再認識してしまうのもこういった楽曲によるところが大きい。
取っ付き難いが、一度、味を覚えたらやめられなくなってしまう。
歌詞内容等ではなく、本物のドラッグソングとはこういったものだ。

まず、今井寿の歌詞が最高だ。

「游ぐサカナ 游がないサカナ
游げるサカナ 游げないサカナ」

これもサイト「デラシネの少年/BUCK-TICK Fan siTe
で詳しく解説されているが、当時のロック・シーンを今井寿なりに解釈した内容だ。


「「希望の都」と書いて「地獄の果て」とルビを振るセンスが、
さすが今井という感じです。」



本当にそう思う。

今井寿という人物の底知れぬ奥深さに、恐怖すら感じてしまうが、
この“天才”という人種は、凡人の見えていない世界を伝える“使命”を持って、
現実世界に誕生してきたのかも知れない。
しかも、その“真実”はタチが悪い事に、得てして凡人にはスパイスが効きすぎていて、
刺激が強すぎる。

この痛烈な皮肉めいた傑作をして尚も、今井寿は、
「わかるかなぁ~、この感じ・・・」
と凡人の僕達をあざけ笑うかのようだ。


映像作品の「相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり」も、
哲学的に演奏シーンはなく、淡い光が照らし出すメンバーの表情のみで
魅せるヴィデオクリップになっている。
メロディアスな間奏?を口ずさむ櫻井敦司のシリアスな表情と、
訥々と唄う今井寿の狂気の表情が反比例して美しい。


bp113-bt-8
『bp113-bt-8』



相変わらずの「アレ」のカタマリがのさばる反吐の底の吹き溜まり
 (作詞・作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


游ぐサカナ 游がないサカナ
游げるサカナ 游げないサカナ
有象無象の魑魅魍魎が跋扈する海の中のあの世界
俺は一人金魚ばかりうるさい魚群(カタマリ)から抜け出す雑魚

欲望だけか 欲望だけさ
よくあることさ よくある芸だ
垂れ流された快感(オルガズム)が たどり着いたマンホールから覗く
それが鉄のブーツをはいて悦ぶお前の心蹴り上げる

Seaside is heaven Neverside is go
Sucide is heaven New blood is go
Somebody is heaven Nobody is go

游ぐサカナ 游がないサカナ
游げるサカナ 游げないサカナ
腐った夜明けの青空の下 無視してさあNinesideへ行こう
向こう側でうまくやるのさ 突き抜けさあ希望の都で会おう

欲望だけか 欲望だけさ
よくあることさ よくある芸だ
最先端の波に乗る金魚 誰よりも先に行き着く先の
海辺にはSuicideの砂 干されるお前は死装束の輪廻振り出し 堂々巡り

Seaside is heaven Neverside is go
Sucide is heaven New blood is go
Somebody is heaven Nobody is go
Six side is heaven Nine side is go

游ぐサカナ 游がないサカナ
游げるサカナ 游げないサカナ
有象無象の魑魅魍魎が跋扈する海の中のあの世界
俺は一人金魚ばかりうるさい魚群(カタマリ)から抜け出す雑魚
突き抜け さあ希望の都で会おう