遂に"ぶっ壊れた櫻井敦司"が登場する。
まるで、素っ裸の自身を曝け出しているような歌詞だ。
この境地に達するのは並大抵ではないとファンも息を呑みこんだことだろう。
人気サイト「デラシネの少年/BUCK-TICK Fan siTe」でもよくこの櫻井敦司の心情が書かれている。
「この歌詞は、ヘタに飾り立てた言葉より、胸に来ますね。
この曲で、遂に櫻井敦司は
ビジュアル系のボーカリストから、
本物のアーティストに脱皮したと僕は思います。。
この作品で離れたファンも沢山いると思います。
けれど、これで「一生ついていこう」と決めた方も沢山いるはず。
ここを見ている皆さんはどうですか?」
もうリミットを越えてしまった櫻井敦司の歌詞の“痛み”と伴って、
こういう楽曲の収録される『Six/Nine』は本当に胸に迫る。
櫻井敦司は“神頼み”をしてまで、なんとか事態を変えたいともがいているのだが、
それは、“神頼み”では如何ともし難いという事を誰よりも分かってしまっている。
それでも、“神頼み”する状況は、我々をただただ切なくさせるのだ。
その血反吐を吐くような“自己否定”の先に、
リアルに生きることを覚悟した男が狂っている。
何故に彼は、そこまで自分を追い詰めるのか・・・?
類まれなる容姿を持ち、成功したミュージシャンという確立したポジションも持っている。
一体、何が不満なんだろうと凡人の僕は思ってしまう。
しかし、それはやはり、彼が創造者(クリエーター)であるからだろう。
作曲家、画家、作家、詩人そういった類の宿命を持つ者特有の“苦悩”なのだろう。
しかも、彼の隣にはいつも天才的な発想で創造し続ける“今井寿”の存在があった。
そして何でも器用にこなす星野&樋口、職人芸のヤガミといった環境。
傑作を量産する今井寿を前に、
櫻井敦司なりの創作努力はこういうかたちと取らざる得なかったのではないか?
己の身を抉り、曝け出し、狂う・・・。
なんてピュアな魂だろうか?
「楽園(祈り、希い)」に続く「細い線」、星野英彦作品のサウンドも一転、
BUCK-TICKダークロックのパンキッシュでもあり、ギリギリの緊張感のもと展開する。
星野楽曲で思うのは、「ドレス」をはじめ、樋口“U-TA”豊のベースラインが主線を引いているところ。
そこに印象的なギターリフに列なって、次第に櫻井敦司が壊れていくのを誘導しているかのよう・・・。
何故なのだろう?こんなにも感情が揺さぶられるのは・・・。
細い線をタイトロープしているみたいだ。
そう、曲調は違っても、この「細い線」と「楽園(祈り、希い)」は、
同じことを唄っているのだ。
それは、果てしない“自己嫌悪”。
出口の見えない現実。
「長いトンネル」を抜けたようなアルバムと表現した櫻井敦司の気持ちが籠もるナンバー。
『Six/Nine』よ!早くトンネル潜り抜けてくれ!
と祈りつつ、叫ぶしかない。
自覚してしまった“神頼み”の哀しさがここにある。

『bp113-bt-4』
細い線
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)
神のお恵みを 力なき弱き僕に
独り迷い 目を開けたなら闇
俺の言葉に 赤面する線の細い俺
独り歌う 食べていくためだけ
弱虫毛虫 生きる場所見つけたか
何ひとつ ああ選べない
もう どうでもいいランランラン 何でもいいランランランラ
わたしはもうランランラン 答えなんて知らないほうがいい
ここから逃げ出す もう何処へも行く気もない
独り走る 辿り着けない場所
神よお恵みを 力なき弱き民に
独り迷い 目を閉じれば光
夢見る夢子 楽しみなこの世界
何ひとつ ああ残せない
もう どうでもいいランランラン 何でもいいランランランラ
わたしはもうランランラン 答えなんて知らないほうがいい
もう どうでもいいランランラン 何でもいいランランランラ
淋しがり屋ランランラン さようならと笑って消えて行く
