「“鼠”って漢字って難しいな」
という単純な興味から詞作したという櫻井敦司。
「鼓動」で感動的に“誕生”の儀式を終えると、
BUCK-TICKは、再び『darker than darknessーstyle93ー』の暗黒世界に舞い戻ったかのように、
へヴィでダークなリフを奏で始める。
真っ白から反転して真っ黒。
こんな表裏一体も『Six/Nine』の特徴である。
極端な振り幅が、BUCK-TICKが経験してきた時間も重さを物語っている。
一気に、神聖で厳粛な哲学世界から厳しい現実の舞い戻る。
そして、そこで生きていく“覚悟”する少年の唄。
それが「限りなく鼠」というダークロックである。
そう、これは少年が男に成長していく“覚悟”を唄った歌だ。
「もうさよならさ」
櫻井敦司自身は、このアルバムでは、自分の中にある【ことば】に拘って詞作したと言っている。
だから、どこまでも生々しくリアルな【ことば】は僕らの胸に突き刺さる。
どこからか拾ってきた横文字の歌詞はどこにも見当たらないばかりか、
『狂った太陽』『darker than darknessーstyle93ー』の何かを暗示するような表現すらない。
ひたすらストレートな【ことば】で僕らの胸を抉るのだ。
しかも同じダークロックでも前作の百獣の王「Lion」から「“鼠”」へ。
この落差も、『Six/Nine』だ。
ヴォーカルも通して低くエフェクトがかかっていて、ダークだ。
ヴィデオクリップでも、
大きなスポットライトを顔面真近に当て狂気剥き出しで唄う櫻井敦司は凄味がある。
エコーのかかった叫びが、地の底から湧き上がってくる。
今井寿&星野英彦のギターリフも、シンプルだがジャストなタイミングで襲い掛かる。
今回のアルバムは指弾きが多かったと語る樋口“U-TA”豊も、
ビンビンと伝わるビートをピックで奏でる。
ヤガミ“アニイ”トールがダイナミックにラデックを打ち鳴らす。
これは間違いなく『darker than darknessーstyle93ー』で培ったダークロックだ。
確かに時は、BUCK-TICKを進化させた。
しかし、経てきた時を彼等は完全に自分達の血肉化しているのだ。
そしてそれは、彼等にしか出来ないBTダークロックワールド。
誰にも真似出来まい。

『bp113-bt-9』
限りなく鼠
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
360度夢見勝ちの俺は 罠にはまった鼠みたいだ
「自由!自由!」と叫ぶ 泣いて逃げてもダメ 追い詰められた時猫に噛みつく
もうさよならさ 甘い顔をした少年よ
可愛い顔した少年よ
生まれ変わり忘れよう 暗い影に遣られるその前に
羽のない俺は笑い転げている 御伽話の恐怖に気付いた
不完全が売りさ 吐いて捨ててもダメ 期限切れまで怯え続ける
もう見飽きたのさ 淋しいふりした少年よ
不思議なふりした少年よ
後戻りのないゲーム 道標に騙され迷ってる
もうさよならさ 甘い顔をした少年よ
可愛い顔した少年よ
生まれ変わり忘れよう 暗い影に遣られるその前
後戻りのないゲーム 道標に騙され迷ってる
甘い顔をした少年よ 可愛い顔をした少年よ
