はじめに言っておこう。
“ヴァニラ”とは女性器のことである。


思えば、これほどエロス全開で、直接的に性描写するのは、
『TABOO』の「SEX FOR YOU」以来かも知れない。
そもそも『SEXUAL XXXXX!』でメジャーデビューした当時は、
こういった性行為をロックに封じ込めるのがBUCK-TICKの十八番であった。
久々にパワー全開でエロスをモチーフに持ってきたのは、
なんらかの呪縛が解けたせいかもしれない。

そう、セックスこそ“生命”そのものだ。

元々「アナログ」という仮題が付いていたという同曲は、
今井寿がSCHAFT、そしてBUCK-TICKが進行していたエフェクティヴなサウンドを逆行させたもので、
ヤガミトールの印象的な生ドラムが打ち鳴らされると、
レトロな雰囲気で、ギターが掻き鳴らされる。
そのサウンドが、なんとも言えず生々しくもエロティックだ。
櫻井敦司による歌詞も、BUCK-TICK流官能作品の本領発揮といわんばかりに艶かしい。

11枚目のシングル「見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ」のカップリング曲となった同曲は、
シングル盤はミックスが異なり、また櫻井敦司は2つのテイクでヴォーカルスタイルを変えている。
とくにアルバム『SiX/Nine』に収録されたテイクは、
いつも力強い、骨太な歌でしっかりと言葉を伝える櫻井敦司が
珍しくわざとうわずった声で歌い上げる「君のヴァニラ」。
また、このヴォーカルスタイルのバリエーションが『SiX/Nine』の特徴となった。


ヴィデオクリップも、「love letter」での今井ワールドから、
今度は悶絶ものの櫻井敦司の濃~い世界感で彩られ、
狂おしいほどにマネキンに愛撫するドセクシーな眼鏡姿の櫻井敦司が、充分に堪能出来る。
口紅をアイティムに使用するこのパフォーマンスは、DVD『悪魔とフロイド』のステージで再現されが、
本当に見ているコッチがドキドキしてしまう演出である。
ルージュを塗りたくった櫻井敦司の猛攻撃に手抜きはない。
これを鑑賞する櫻井ファンの女性なら顔を赤くしてしまうだろう。
しかし、もう一線を越えると下品に為るところを櫻井一流の演出で留めているのは見事だ。
メンバーもこの妖艶な世界で、上着を肩まではだけてキーボードを演奏する星野英彦や
白いスーツに身を包んだグラサン姿のヤガミトールもセクシーだし、
今井寿のギターと樋口“U-TA”豊のレトロなプレイは、
グラマラスなROXY MUSICやJAPANのクリップを見ているようだ。

赤く痙攣してるヴァニラ 左胸が熱い!

bp113-bt-6
『bp113-bt-6』



君のヴァニラ
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



可愛い君の胸 その命愛おしい

激しく切なく求めてみたい 激しく激しく求めて
冷たく優しく求めて欲しい 冷たく冷たく求めて

愛おしい君の胸 その命憎らしい

激しく切なく愛してみたい 激しく激しく愛して
冷たく切なく愛して欲しい 優しく優しく愛して

赤く充血してるヴァニラ 左胸が熱い

例えば命短し 唇で愛を伝えよう
炎が消えるそれまで あなたの為に燃やして

水 空気 光と 愛 糧 生きがい 夢 欲 喜び あんたが大好き

赤く痙攣してるヴァニラ 左胸が熱い

例えば命短し 唇で愛を伝えよう
炎が消えるそれまで あなたの為に燃やして

例えば命短し 舌先で触れるその胸
炎が消えるそれまで わたしの為に尖らせ

水 空気 光と 愛 糧 生きがい 夢 欲 喜び あんたが大好き