NHKの音楽番組【POP JAM】に出演したBUCK-TICKは、
長期オフ期間についてインタビューを受けている。

今井寿は、SOFT BALLETの藤井麻輝とのユニットSCHAFT活動。
ヤガミトールは、地元群馬で、BUCK-TICK衣装展とアマチュアバンドへのドラムクリニックを。
星野英彦は、DER ZIBETのヴォーカルISSAY(藤崎一成)のソロアルバムで、
タイガース(GSサウンド)の「シーサイド」や「恋のハレルヤ」の楽曲にミュージシャン参加。
また、樋口豊は、仲野茂等と新宿LOFTのライヴの参加したりしていたが、
櫻井敦司だけは、不機嫌そうに「何もしていませんでした」と解答している。

たしかに自宅に籠もり、英会話や油絵に手を出していたらしいが・・・。


そして、ライヴパフォーマンスでは、10枚目のシングル「鼓動」と
11枚目のシングル楽曲となる「見えない物を見ようとする誤解 全て誤解だ」を披露している。
短髪にしたヘアースタイルに帽子を深く被り、白いシャツにスラックス姿と以前の着飾りを捨て去り、
素顔の櫻井敦司は、姿ではなく、本当に“楽曲”のみで勝負しているのがわかる。
この姿を見て多くの人は、ヴィジュアル系の終焉を間のあたりにしたのではないだろうか?

時代も浮かれていたバブル真っ盛りに登場したBUCK-TICKは、
見事に弾けたバブルと不況真っ只中の当時1995年という背景は印象的である。
見た目ではなく、本質で勝負を開始しようと思いたっても何ら不可思議なことはない。


この頃までにBUCK-TICKが内包しているその負のパワーは独特の高み至っていた。
“シリアスなテーマを直情的に表現しようが、快楽主義あらかさまに謳歌しようが、
決して下世話にならない。
簡単にいえば知的という事だが、鼻持ちなら無いインテリジェンスとは違う。
毒のあるカリスマ性と内省的なパンク・アティチュードが常に融合しているのだ”
と表現した音楽ジャーナリストもいた。

日本の音楽シーンにおいて彼等はある意味で、
そうした負のパワーを極限まで上昇させてきた唯一のバンドだと思っている。
ところで負と形容すると非生産的なニュアンスがあるようにも思われるが、
例えば苦悩に身を置き脱却することも、ある種のパワーだと理解しなくてはならない。
つまり、彼等の持つ負のパワーは、常に僕らの魂を揺さぶり浄化してきたのである。

さて、そうした状況の中でアルバム発表前の第2弾シングル「鼓動」の一節

「抱かれてた母星に さよならを告げよう
 胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

 なぜ生きてる 知らないけど それでも激しく

 生きていたいと思う 愛されているなら
 ごめんなさい ありがとう」

というフレーズを聴いたとき、僕は愕然とした。

同じ負のパワーでも、はっきりと次のステップへ進むという正への転換がなされているのだ。
これは周知の通り『狂った太陽』から一連の流れに対する彼等のひとつの応えなのだが、
実に重く説得力のある意思表示である。
まさしく彼等は自らも浄化し、再生産を繰り返しているのだ。

それが『Six/Nine』の1995年当時の彼等をして、最も高みを実現したと感じさせるのは、
きっとシンプルが故に、反転した負から正への動きと、
BUCK-TICK自身の持つ、どこまでも純粋“ピュア”な魂の表現となったからであろう。
すごく純度の高い良質感がするからだ・・・。





鼓動
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



完璧な幸せ いつも包まれていた
苦しみのこの世界 ある日生まれ声を上げた

抱かれてた母星に さよならを告げよう
胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

なぜ生きてる 知らないけど それでも激しく

生きていたいと思う 愛されているなら
ごめんなさい ありがとう

この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

絶対の安らぎ あの日抱かれていた
悲しみのこの世界 ある日あなたに包まれた

見守る母の星 静かに今消えて
胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

なぜ生まれた 解らない それでも激しく

生きていたいと思う 愛されているなら
生きていたいと願う 愛されているなら
ごめんなさい ありがとう

この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

この世に生きるあなたの鼓動 悲しい事は何もない
この世に生ける愛する人 悲しい事は何もない