「この世に生きるあなたの鼓動 はかない だけど美しく
 この世に生きるすべての鼓動 はかない だけど輝いて」

BUCK-TICKの1995年の3ヶ月連続リリースは、
BTファンにとっても、そして、一般の音楽ファンにとっても
印象的な上昇感を伴った。

その第2弾となるシングル「鼓動」では、いきなりメロディアスなリフレインバラードで、
先行リリース「唄」との対照的な面を見せ付けただけでなく、
次の発売予定アルバムが、いかにドラマチックな作品になるのか期待させるに充分であった。
サウンドはへヴィなグランジロック「唄」。そして対照的なアンビエントな演出の「鼓動」。
この2曲は完璧な連作であると同時に、画一的に他者との違いを魅せ付けた。
流行し始めた“DANCE RAVE”感とは全く異なる、その逆を取るストレートなロック。
どれをとってもBUCK-TICKにしか奏でられない音質。空気感。独特な世界感。


しかし、この「鼓動」がそういったBT独自のサウンド面をも意識させないほどに
万人にとっても素晴らしいバラードに仕上がったのは、
やはり櫻井敦司の生々しいまでにリアルな歌詞によるところが大きいだろう。
イメージは母親の子宮の中。
やがて、現実の産まれ堕ち、一人の人間として生きていく、
そこには避けられない別れ、悲しみ、でも生きていくのだ。

そして、それは“痛み”を伴う。
これは、その生々しさが故に感じさせる感覚。
この「鼓動」という楽曲を聴くとなぜか僕は魂を揺さぶられ、
普段は意識さえしない“生命”をありありと意識させられてしまう。
だから涙が止まらない。


製作されたヴィデオ・クリップでは、まばたきもせずに目を見開いた櫻井敦司が映し出される。
これが、初めは静止画ではないかと勘違いしてしまいそうなくらいに完璧で、
もしかして、櫻井敦司が死んでしまったのでは?と思わせる設定になっているが、
しかしながら、やがて流れ出す涙が、“生命感”を感じさせる。

“生”を“静”で表現する櫻井敦司と“動”を表現するバックのメンバーの対称図で魅せる
このヴィデオ・クリップでは、メンバーが、不動の櫻井に対して、順々に耳打ちしていく。
この時、各メンバーが何を“囁いた”かが、ミステリアスに視聴者の興味をくすぐるのだが、
それ以上に非常の美しいヴィデオクリップとなった。


バンドとしても10枚目となるシングルは、完璧なBUCK-TICKバラードとなった。



鼓動
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



完璧な幸せ いつも包まれていた
苦しみのこの世界 ある日生まれ声を上げた

抱かれてた母星に さよならを告げよう
胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

なぜ生きてる 知らないけど それでも激しく

生きていたいと思う 愛されているなら
ごめんなさい ありがとう

この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

絶対の安らぎ あの日抱かれていた
悲しみのこの世界 ある日あなたに包まれた

見守る母の星 静かに今消えて
胸の音聞こえる 確かに鼓動震え出す目醒めだ

なぜ生まれた 解らない それでも激しく

生きていたいと思う 愛されているなら
生きていたいと願う 愛されているなら
ごめんなさい ありがとう

この世に生きるあなたの鼓動 儚い だけど美しく
この世に生ける全ての鼓動 儚い だけど輝いて

この世に生きるあなたの鼓動 悲しい事は何もない
この世に生ける愛する人 悲しい事は何もない