映像はシングル「唄」発売後、TV朝日系『ミュージック・ステーション』の
長時間ライヴスペシャル番組に出演時のもの。
「唄」リリースと供に、マスメディアに再び登場した櫻井敦司は、
トレードマークともいえるストレートの長髪をバッサリ切り落とし、
以前、彼自身が傾倒していたDAVID BOWIEか、Bauhausか、という風貌で、
それまでの中性的な(むしろ女性的な)イメージを振り切って、
オールバックの男盛りの魅力を振りまいた。
眼つきは、相変わらずの鋭さであったが、
深い闇の中で、鈍く光っていた以前とは違って、
“生命力”を感じる力強い“眼光”を放っている。
そう生きることへのストレスを率直に、“眼光”に込めた挑発的な光である。
しかし、現れた衣装は、ヴィデオクリップの仮面こそ外したが、
「唄」の妖しい婦人のコスプレの衣装のままのタイツ姿・・・。
このイメージチェンジは、
夢の中の貴公子を憧れる女性ファンには、賛否両論であったが、
短髪になって、そのつくりの美しさが本物であったと改めて関心した方も多かったであろう。
そう、櫻井敦司も現実世界の人間であったと・・・。
夢から覚めたヴォーカルもキレキレで、絶叫されるも多彩にオーディエンスを威嚇する。
そして、この日はよりハードな演奏がカッコイイ『殺シノ調べ This is NOT Greatest Hits』
からヴァージョンでパフォーマンスされた「惡の華」も、
迫力がじかに伝わってくるようだ。
そして新曲の「唄」!
素晴らしいへヴィ・グランジだ!
待ちに待ったファン達も絶叫する。
「お前を!愛しているのに!」
残念ながら演奏のほうは、カラオケであるが、
これまた別の楽しみ方としては、今井寿のパフォーマンスが傑作である。
ギターソロでは、完全にギターを手放し、両手を挙げて観衆を煽っている。
「お前ら、だまされてんじゃないぞォ」
とばかりにTVにはソロ演奏中チューニングを始める姿もしっかり映し出される。
どうやら、この後、番組とは案の定モメたらしく、
コレ以降、なかなか『ミュージック・ステーション』には顔を出さなかったと記憶している。
逆に櫻井敦司は、この叫びの“挑発”は“口パク”じゃないと言わんばかりに、
歌詞テロップとは、違う歌詞を唄い始めた・・・。
「惡の華」では最期にアドリブの歌詞を!
「唄」では、サビで歌詞に順序を入れ替えて・・・。
これが、単なる間違いじゃないことは、彼の表情を見ていればわかるだろう。
勿論、巧妙で知的な彼は、「間違えました」と番組側には言い訳したかも知れないが、
熱心なBTファン達は、彼等の反骨精神を目の当たりにして、
興奮を抑えられなかったに違いない。
そう、“反骨精神”。
これこそが、『Six/Nine』の重要なキーワードであった。
それまでも、リスキーなイメージや、ロック、セックス、ドラックと
BUCK-TICKのアウトロー的な印象をその活動の中に見ることはあった。
しかし、ここまで露骨に“反骨精神”を露にしたのは、
この頃が、始まりだった。

『Scandalbanner』
悪の華
作詞:桜井敦司/作曲:今井寿/編曲:BUCK-TICK
遊びはここで 終わりにしようぜ
息の根止めて Breaking down
その手を貸せよ 全て捨てるのさ
狂ったピエロ Bad Blood
夢見たはずが ブザマを見るのさ
熟れた欲望 Fallin' down
サヨナラだけが 全てだなんて
狂ったピエロ Bad Blood
燃える血を忘れた訳じゃない
甘いぬくもり が目にしみただけ
Lonely days
あふれる太陽 蒼い孤独を手に入れた Blind-Blue-Boy
燃える血を忘れた訳じゃない
甘いぬくもりが 目にしみただけ
指の隙間で この世界がまわる
熱くキラメク ナイフ胸に抱きしめ
Lonely days
あふれる太陽 蒼い孤独を手に入れた Blind-Blue-Boy
Lonely nights
凍える夜に叫び続ける 狂いだせ Blind-Blue-Boy
Lonely days
あふれる太陽 蒼い孤独をたたきつぶせ Blue-Boy
Lonely nights
凍える夜に叫び続ける 狂いだした Blue-Boy

唄
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
どうして生きているのか この俺は
そうだ狂いだしたい 生きてる証が欲しい
神経は落ちてくばかりで 鼓動はずっとあばれ出しそうだ
深い森に迷い お前の名を呼ぶ
逃げ出すことも出来ない 立ち止まることも知らない
聞いてくれこの声 お前を愛しているのに
抱いて慰めてくれ そう甘く
だめだ溺れてしまう 優しい君の中
誰も泣きたいはずだろ 優しくきっとされたいはずさ
熱い肉の軋み お前にこの愛
生きる事はできる 消えていくすべを知らない
この手伸ばしている お前を愛しているのに
ああ この世で美しく ああ 限りないこの命
ああ この世で激しく ああ 燃えろよこの命
どうして生かされてるのか この俺は
そうだ叫びだしたい 生きてる証が欲しい
神経は落ちてくばかりで 鼓動はずっとあばれ出しそうだ
熱い皮膚の裂け目 吹き出すこの愛
消える事はできる 生きてゆく意味知らない
この手伸ばしている
逃げ出す事もできない 立ち止まる事も知らない
聞いてくれこの声 お前を愛しているのに
ああ この世で美しく ああ 限りないこの命
ああ この世で激しく ああ 燃えろよこの命
