『darker than darkness -style93-』93曲目の隠しトラックとして収録されており、
アルバムには、曲名の表記もなかったが、
間違いなく「die」の連作的コンセプトの基に挿入された楽曲であろう。
そして、それはこの暗黒世界を唄ったアルバムの裏の意味での代表作品でもあった。
尚、シングル盤「die」のカップリング曲として収録され、
また、ベストアルバム等では「D・T・D」と表記されている。
この『darker than darkness -style93-』の世界を構築する、
“生”=“live”は苦境そのものであり、
逆に“死”=“die”こそ解脱の楽園という構図であるが、
やはり、そこで安らかに逝かせるBUCK-TICKではなかった。
そこで“転生”というキーワードが浮かび上がる。
“転生”とは、一般には仏教用語とされているが、
実際は仏教起源の思想ではなく、
世界各地に見られる古代からの神秘主義的な信仰に認められる。
インドでは六道にみられるような生まれ変わり(→輪廻)による苦から解脱することが目的とされたが、
仏教ではそのような転生を方便として受け入れ、
浄土教の源信等のように、
転生を信じながら真摯な布教活動をした宗教家も多くいた。
曲調もダークなので誤解し易いが、
ここで唄われている歌詞を見ると、BUCK-TICKにとって“転生”とは、
『狂った太陽』で唄われた「変身[REBORN]」にも近い概念であり、
苦痛を伴いながら生まれ出る“新生児”は、進化を伴い、
また、苦悩する現実社会へと挑戦していく姿勢が描かれているようにも取れる。
そう“苦しさ”から逃げ出す事はできないのだ。
覚悟を決めて自分を進化させていくしかない。
「誕生まで狂いそうに叫んだ 闇の中で 」
これこそ、BUCK-TICKが描こうとした暗黒世界の戦いの正体。
終始して、暗黒世界を唄い、実社会を忌み嫌う【ことば】で埋め尽くされた
アルバム『darker than darkness -style93-』であったがこの隠しトラックで、
初めてポジティヴな姿勢を見せていると言えるのではないだろうか?
そして恐らくこれは、次のアルバム『Six/Nine』に収録される「鼓動」へと帰結するのだ。
映像は貴重なもので途中で途切れてしまっているが、
この「darker than darkness」がライヴ演奏され、
アルバムのままの世界観が再現されたていたことに感謝したい。

『bp9307-bt-12』
darker than darkness
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
激しく流れ出した赤色(せきしょく)
誕生まで狂いそうに叫んだ 闇の中で
醜く歪みだしたこの美貌
残酷さを売りものに歌うのさ 愛の歌を
透明交わる体液の湖 二つの僕と僕は奪い合う
ああ 僕は三歳のまま 黒く赤い瞳
そう まるで天使のように
愛に飢えた 僕はあなたむさぼる
ガラスで築き上げたこの城
誰もやっては来ないだろう このまま
ああ 僕は陽光の中 たどり着いた砂漠
そう ここは最後の聖地
さあここで交わるあなたの中へ
夢を途中で 堕ちてゆく暗闇
いつか目覚めの瞬闇(とき)を待つ 迷い子
ああ たった一度でいい あの笑顔見せて
そう あれは永遠だった
熱い海の微笑み すくに消えた
