「ガルルルルルルル...」

いきなりハードなギターリフからタイトル通り猛獣の唸り声のようなSEが入る。



しかし、ここで登場するのは誇れる王者ではなく、
苦悩する王者ライオンを演じる櫻井敦司特有の自己否定美学である。

この楽曲も、歌のメロディよりも、ギターリフが重く心に残る。
今井寿の短音ギターフレーズと、星野英彦のカッティングが絡み合い、
本当に獰猛な獣を連想させている。
それにしてもこの楽曲はギターリフのレベル(音量)が高い。
楽器間の音量バランスの定石を無視するほどラウドなギターサウンドが突き刺さる。
油断するとライオンに頭から喰われてしまいそうだ。

歌詞は「キラメキの中で・・・」や「ZERO」同様にそれまでの“唄う自分”への苦悩を歌っているが、
歌詞の中で櫻井敦司は矛盾する自ら気持ちに大きく揺れている。
しかし、ひとり芝居をする櫻井敦司の自答自問にはやはり結論がでない。
頭で考えて無駄。と諭されているようだ。もっと感情的になれと。
櫻井独特の喘ぎ声の演出で生の感触が野生的でセクシーでさえもある。

その不安定さが、よりこの楽曲をスリリングに盛り上げている。
まさに愛憎入り混じった人生を表現しているのだろうが、
皮肉にも、一番憧れていたロックシーンである程度の成功を勝ち得ていた彼に、
襲い掛かったのは、ある種の“あやつり人形”的なショウビジネスの世界であった。

それを彼は「檻の中で暴れる獣」と表現した。
そう檻の中でいくら暴れても、それは予定調和に他ならない。
そんな“安全保障”付きの“狂気”ほど、彼にとって陳腐なものは無かったのだろう。

そういったストイックな自答自問で、櫻井敦司は自分を傷つけていく。
例えば“攻撃性”というものがあるとすれば、それは自分に向けての“攻撃”にもなると、
後に彼は語っているが、百獣の王ライオンの牙こそが、
諸刃の剣となり、自身の傷を抉っていく様が見える。


その鮮血が鮮やかでセクシーなのだ。


bp9307-bt-10
『bp9307-bt-10』



LION
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



ああ もう だめさなんて 二度と言わないで
俺は檻の中で暴れる獣の様さ
金色に輝く髪 風にただ なびかせた

ああ何て醜い街だ 夢も見えないぜ
もう捨ててしまえばいいさ この顔も声も
体中に絡みつく甘い空虚 さあ引き千切れ

あああ・・・ 抱かれて・・・
あああ・・・ 消えそう・・・

Coffeeをそそぐ君 真っ赤な口紅
口づけをしておくれよ 何も言わないで
もうすぐ訪れる死は近い さあお願いだ

あああ・・・ 抱かれて・・・
あああ・・・ 消えそう・・・

誰を愛した(誰を憎んだ) 誰に恋した?(誰を汚した)
誰を愛した(誰を愛した) この俺は・・・

さあ全て燃やせ この俺も ああ安らかに・・・

あああ・・・ 抱かれて・・・
あああ・・・ 消えそう・・・

ああ もう 何もかもがくだらないぜ
こうなってきたらヤバイ 潰されそうさ
天国へ行くのさ ここよりは まだましだろう


誰を愛した(誰を憎んだ)
誰を愛した(誰を愛した) この俺は・・・?