正直このBUCK-TICKの代表作にして、新たなる覚醒を唄った「スピード」ですら、
この『darker than darknessーstyle93ー』の世界観を基軸とした
【LIVE GAGA special93】では、少々違和感を感じてしまう。

それほどまでに『darker than darknessーstyle93ー』は
色濃く“影”を落としたのだ。

時代も80年代末に起こったバンドブームは、
1990年から1992年辺りにピークを迎えていて数え切れないほどデビューしたバンドも
次々にこの時期に解散し、このブームを生き残ったのは、極僅かなものであった。
同時期にヴィジュアル系の土壌を作ったXはXJAPANと名を変え、
アメリカにその活動の基盤を移し日本を後にした。

増殖した多くのバンドはリスナーにも飽きられ、
主流となるシーンの流れはB’zに代表されるビーイング系アーティスト、
また新たなるトレンドとして小室哲哉プロデュースのダンス系ミュージックが跋扈し始めた。

ここから1995年までにはBOOWYから始まったとされるバンドブームの
主役級のバンドBLUE HAERTS、そしてユニコーンも解散。
この日【LIVE GAGA special93】でBUCK-TICKと競演し、
翌年1994年【LSD Tour】を供に周ったSOFT BALLETも解散(活動休止)を宣言した。

明らかに時代は動いていた。
思えばこの時のBUCK-TICKも過渡期を迎えていたのは確かだ。

特に櫻井敦司は、この時期から1995年の『Six/Nine』まで
ストレスは最高潮に達していたと言われる。
アルバム『darker than darknessーstyle93ー』には
あちこちに死を匂わせる歌詞があり、
その後1994年にはグランジロックを代表する
アメリカシアトル出身のNIRVANAのKurt Cobainの自殺等もあり、
BTファンの中にも「櫻井は大丈夫なのか」「自殺するんじゃないか」
という悲痛な憶測も飛びかった。

※参照:『デラシネの少年/BUCK-TICK Fan siTe』
http://deracine.cocolog-wbs.com/blog/

一方、今井寿は、バンド形式の旧態依然としたロックシーンに飽き飽きしていた。
かたちの拘るよりも「カッコよければいい」という彼の姿勢も、
今までの自分達の限界を超えてしまおうという意欲に燃えていた。
飲み込めるものは、全て飲み込んでしまえとばかりに、
インダストリアル、エレクトロ二カ、グランジ/オルタナティヴ、トランス、アシッド・ハウス、
そしてヒップホップ。
あらゆる要素を自分の音楽に吸収していったのだ。

それこそが彼のサバイバル術だった。
“有象無象の魑魅魍魎が跋扈する海の中のあの世界
 金魚ばかりうるさい魚群(カタマリ)から抜け出す”ための。



スピード
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



人差し指を頭に突き立て ブッ飛んでいる
いつでも頭ギリギリ 噛み砕いて
ためらいをとめて 摩天楼 ダイブするのさ

今夜も頭ギリギリ 骨まで透けて見えた
安らぎをとめて 今宵の共犯者達へ

女の子 男の子 一筋 傷と涙を
痺れた体 すぐに楽になるさ
蝶になれ 華になれ 何かが君を待っている
愛しいものに全て 別れ告げて

-イカレタノハオレダケ キミハスコシマトモダ-

スピードをあげて 摩天楼 ダイブするのさ
ボリュームをあげて 今宵の共犯者達へ

女の子 男の子 君には自由が似合う
これが最後のチャンス 自爆しよう
蝶になれ 華になれ 素敵だ お前が宇宙
愛しいものを全て 胸に抱いて
君が宇宙

目覚めは今日も冷たい 月夜のガラスケース
今夜も頭ギリギリ 骨まで透けて見えた