FROM DARK SIDEと銘打った『darker than darkness style93』での活動は、
ある意味においてBUCK-TICKの新しい“専門分野”の構築にはなったが、
それは、逆に取ると新たなる“制限”を自らに課した。

自虐的に喘ぐ櫻井敦司にしても、
独特の新世界を描く今井寿にしても、
一度、過去を振り切って、“ZERO”にする必要があったのだ。
この渾身のアルバム『darker than darkness style93』、
そして、更にその身を削る作業で完成した次大作『Six Nine』への
ストイックな創作活動の中で、彼等個人も、それまでの自分をも振り切る作業に挑戦していたのだ。

それは、BUCK-TICKの中では自然とそういった方向性に向かったのであろうが、
その後の彼等の作品を見ると、ダークとポップの振り幅が極端に大きくなったと感じる。
そういった極端な楽曲をBUCK-TICKナンバーならしめているのも、
他ならぬ櫻井&今井のコンビであったと言えるが...。

この「ZERO」には、そういったBTの軌跡が歌詞に散りばめられている。
“狂える太陽”“キラメク”“殺シテ”といった断片的なフレーズが、
彼等に取っては過去を“ZERO”へ清算する“贄”であった。

サウンドは、ギスギスに歪み、低域と高域を極端にカットした
イコライジングされたカッティングギターから始まり、
ウネリの効いたファンキーなシャッフルリズムで、
ここでも、樋口“U-TA”豊のチョッパーベースが弾みからみつく。
“U-TA”と“アニイ”のコンビネーションも抜群なテクニカルナンバーだ。
ギターコンビのアンサンブルも見事だ。
後半には星野英彦のガットギターによるカッティングも入ってくる。
リズミカルではあるが、決して軽くはない。

その重厚感は、メンバー全体の意思統一のもとリスナーを暗黒へと導く。
アクセントも変則でヴォーカルをとる櫻井敦司も、
“声”をパーカッシィヴな楽器の一部に変えて楽曲に貢献している。

そして彼らはわかっていたのだ。
暗闇の向こう側に突き抜けると・・・


そう“ZERO”になるさ・・・全てが。



bp9307-bt-6
『bp9307-bt-6』



ZERO
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


このまま雨になればいいさ 震えた体を撃ち抜く
俺の中には赤の目覚め あふれた狂気の前ぶれ
狂える太陽 それはまるでわめき叫ぶ 顔を溶かしてた

この体 きっとキラメク ああ 燃え尽きる
ハイになるさ 今夜は
その指でそっと 殺シテ 嗚々 消えてうせる
ゼロになるさ 全てが

これから俺は 何処へ逃げて行くのか? 笑って死ぬのさ
月に化けた君を愛し眠る (もう)明日はいらない
俺はもう沈む 唄うことをやめた獣 帰る家もない
女の胸で そして何を想い そっと涙流すのか?

この体 きっとキラメク ああ 燃え尽きる
ハイになるさ 今夜は
その指でそっと 殺シテ 嗚々 消えてうせる
ゼロになるさ 全てが

青空がそっと手招く ああ 溶けて浮かぶ
ハイになるさ 今夜は
もう一度ずっと飛ぶのさ ああ 真実さえ
ゼロになるさ 全てが