アルバム『darker than darkness -style 93-』は
1993年6月23日にビクターインビテーションよりリリースされたが、
前作に増してノイズ音が顕著になり、ギターサウンドもヘビーなものになって皆を驚かせた。
アルバムタイトルは「暗闇の向こう側」という意味合いを込めて、今井寿が命名。
オープニングの誘導の呪文のような「キラメキの中で・・・」が終わると、
2曲目は歪んだティンパニの連打でスタートする。
当然ヤガミトールのセットには以前は入っていなかった音だ。
そして、すぐに低音弦の開放弦を使ったエッジの効いたリフがからむ。
激しいワウのギターリフが唸り、この「Deep Slow」で、このアルバムは、動き始める。
しかし、今までBUCK-TICKでは考えられないようなグランジ・へヴィ・ロックだ。
オープニングの「キラメキの中で・・・」に続き重いが、
バックで鳴り続けるリズミカルなタンバリンは櫻井敦司によるものだろうか?
樋口“U-TA”豊のチョッパーなども入り、ノリはファンキーな楽曲である。
間奏部では初期のJAPANを思わせるリズムブレイクがあり、
ギシギシに歪むヤガミのドラムサウンドとドラミングも最高にグルーヴしている。
しかし、決してポップではない。
『darker than darkness -style93-』では、
2曲目以降、BTお得意の物語風に進行するが、
ここではミュージックトレンドをいち早く取り入れ、貪欲に流行を導入している。
特に2曲目~5曲目までの流れは傑作である。
つづく「誘惑」では、
本格的にBT流ジャズを取り入れた。
ウッドベースのグリッサンドに導かれ、ドラムが軽いロールから4ビートを刻み始める。
続くジャジーなピアノ。
まるでナイトクラブで演奏されているスタンダードジャズナンバーは、星野英彦による意欲作。
全体に入っているアナログレコードの針のノイズはあえて傷を入れたレコードから収録したもので、
何十年も前に録音されたかのような錯覚の世界を創り上げている。
イントロと間奏のサックスは今井寿によるギターシンセ。
そして一番の聴きどころは、樋口“U-TA”豊のウッド風ベースプレイだ。
エレキのフレットレスではこんな暖かみはまず出ない。
素晴らしいジャズに仕上がっているが、櫻井敦司による歌詞は、
「そして今夜も誘っている 死という名の恋人」
「早く逃げなきゃ」と苦悩を魅せる。
「死」を甘美なものとして扱いながら、それから逃げようとしている「僕」。
そして「僕を殺サナクテハ イケナイ 君のもとへ」。
アダルトに暗黒世界を唄っていて、そのギャップが凄味かける。
映像の【TVK:LIVE GAGA】では、ポップだった時代が信じられない位に、
暗がりのステージでアングラ的に劇場的なパフォーマンスが続く。
「久々にライトを浴びる...とても幸せ...」
と櫻井敦司のまるで地下牢の監禁されていたかのようなMCが、
不気味さを増している。
何かが、これまでと違っている。
ファン達は素晴らしいパフォーマンスに興奮しながらも、
彼等についていくのがやっとだ。
まさに「Deep Slow」。
もっと“深いところ”までツイテコイ。
とオーディエンスを挑発しているようだ。

『bp9307-bt-2』
Deep Slow
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
リズムはひどく狂ってきた 突き抜ける
肌はちぎれそう体の外へ
指を伸ばせば透けてしまう ロマンティック
宇宙の中で愛しあうように浮かぶ
太陽を撃つ 暗闇の天使になる
ただもう生まれる 僕だけを待ち続けてた
もう 答えは見えてるさ
光る瞳の夜の中に君がいる 濡れた体エロスに光る
もっと激しさを痛い程 味あう様に
ただ もう感じる夜だけを待ち続けてた
さあ 憂いよ 消えてくれ
oh oh 降り注ぐ星 この僕は飛び込む
oh oh 美しき今 この体 狂おしい
もう 答えは見えてるさ
さあ 死ぬ程抱いてくれ
oh oh 熱くなる なぜこんなにも欲しがる
oh oh 濡れてくる今 この体溶け出す
oh oh 降り注ぐ星 この僕は飛び込む
oh oh 美しき今 この体 狂おしい
Deep Slow
