転換期となったオリジナル前作『狂った太陽』から数えると約2年4ヶ月振りとなった
オリジナル6枚目アルバム『darker than darkness-style 93-』。
これを最高傑作と評する人も多い。
というのも間にはさんだセルフカヴァーのベスト盤『殺シノ調ベ This is NOT Greatest Hits』
で初期に、いったん一区切りをつけたBUCK-TICKは、
メジャーなイメージとバラエティ豊かに彩られた音色と距離を置き、
"闇より暗く"というタイトルを体現する
ドッシリと重たく薄汚れたような独自のサウンドに統一したからである。
これこそ以降のBUCK-TICKというバンドを構築したサウンドそのもので、
バンド・ブームからヴィジュアル系へ中で他のバンドとの追随をまったく許さなかった。
ある意味では、バンドからファンへ向けた“踏み絵”的作品となったのだ。
ここをクリア出来ないと先には進めない。
このメタル/レゲエの傑作「キラメキの中で…」では、
ノイズたっぷりのモッタリとしたオープニングが特徴的だ。
頭から、このアルバムの中で最も暗く、重い楽曲で「ケロイドの男」が登場する。
逆回転風のギターで幕を開けるこの楽曲は、
何やら魂を自分の元に呼び込む笛のようにも聞こえる不思議な旋律だ。
その旋律に誘われて一歩踏み出すと、そこはダークなBTの世界。
真っ暗で小さな地下室の一室なのか?どこまででも広がる闇の帝国なのか?
そして、いきなり歪んだスネアが連打されミディアムのへビィーなリズムが叩き出される。
テンポは♪=100前後。
バスドラムと心臓の鼓動がリンクした瞬間、絶叫のようなヴォーカルが重なる。
ギターの音は分散していて、ベースとドラムのみで重低音を鳴らしている。
ギターは、ワウやディレイを使い、更に激しく歪んでいて、非常に奇抜でエフェクティブ。
そして、その上に更にエフェクトがかかったヴォーカルが低い声で囁くように歌う。
BT的暗黒世界そのものがここに登場している。
魂を誘う。呪文のように。
今井寿は本作で目指したメタル/レゲエの完成度には感銘している。
櫻井敦司も気に入っているらしく、後のライヴでも頻繁にセットリストに上がる。
(この世界観をライヴで表現するのは、大変だと感じるが素晴らしいデキだ)
皮肉にもタイトルの“キラメキ”のイメージは一切顔を出さないが、
“キラメキ”とは、メジャー・ブレイクの切欠となった「JUST ONE MORE KISS」の歌詞にあり、
そういったメジャー・シーンの中での反骨精神が暗黒世界への一面へと誘ったのだろうか?
これは恐らく“キラメキ”に焼かれた“ケロイドの男”の決意表明だ。
もしくは、単にドラッグの影響かとも思われるが!?
または櫻井敦司が、自らを“ケロイドの男”と称して侮蔑しているようにも聴こえる。
いづれにしろ“キラメキ”との決別を“キラメキ”の状態の中で決意したものと思われる。
それがアルバム終盤の「die」へと続き、“キラメキ”との離別と、
深く暗い暗黒の扉を開け突き進むバンドの姿がイメージされる。
映像は次の年、勢力的活動した対バン形式の【LSB(LUNA SEA、SOFT BALLETらとのライヴツアー)】
のプロトタイプとなった1993年12月31日大晦日、渋谷公会堂での【TVK LIVE:GAGA】の生中継。
ラスト、自嘲的に笑う櫻井敦司が印象的な傑作だ。
『darker than darkness-style 93-』は
その後もジャズ/ロカビリーのスウィングするグルーヴや、
メタル/ヘヴィロックに通ずる轟音など、
幅広いジャンルを血肉化して新たな一歩を踏み出していることも伺える意欲作となった。
しかし始めBTファン達は身を硬くしてこのバンドを見守るしか出来なかった。
あまりにも、その世界の距離感が遠く感じてしまったからに違いない。

『bp9307-bt-1』
キラメキの中で...
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
ケロイドの男が歌う ドレスをひる返し
君が笑う 「きれいだね」
恋を歌う男の影に 誰もが酔いしれた
僕は笑う 「楽しいね」
踊りましょう 手を繋いで 目を閉じて さぁ
その声は弱々しくて 目つきはギラついて
君が笑う 「きれいだね」
降り注ぐ明かりの中で 今にも消えそうだ
僕は笑う 「楽しいね」
夢を見る男たちに美しき詩を
愛の中 女達は恋をする夢
舞台の中の 裸の僕は誰だい?
微笑みかける みんな何処かへ消えた・・・
もう少しだ・・・もう少しでキラメキになる
誰も彼もがキラメキになる
逃れられないキラメキが来る
君のためにも 僕のためにも きっと楽になれるでしょう?
Woo 愛の歌よ
叫び声 耳を裂いた 何かが今 ああ
踊りましょう 手を繋いで 目を閉じて ああ
ベッドの中の 怯えた僕は誰だい?
化粧のとれた 裸の僕は誰だい?
ケロイドの僕は歌う ドレスをひる返し
君が笑う 「きれいだね」
恋を歌う僕の影に 誰もが酔いしれた
僕は笑う 「楽しいね」
僕は・・・
