“闇”が唸るような意欲作
『darker than darkness-style 93-』収録曲の中で、
最も優しく、そして感動的な楽曲が1993年10月21日シングルカットされた。
その曲名も「die」。
こんなタイトルでもオリコン初登場第10位にランクインしている。
曲調は確かに優しい。
しかし、単刀直入に“死”を描く櫻井敦司。
しかも、彼は“死”への憧憬を込めてこの歌詞を作っている。
これまでもBUCK-TICKは“死”を表現した幾つかの楽曲を生み出してはいる。
ダークな世界に初めて挑戦した『TABOO』にも、
胎堕を取り扱った「EMBRYO」、殺人現場の心情を描いた「SILENT NIGHT」をはじめ、
“死生観”は、このバンドの得意技でもあった。
だが、こんなにも真正面から“死”とその瞬間を描いた楽曲は初めてだ。
ビクターもよくこの楽曲のシングルカットに踏み切ったものだ。
確かに、死後の世界は興味の湧くモチーフではあるが・・・。
それをBUCK-TICKがやるとなると
やはりおどろおどろしい世界を想像してしまうが、
意外にも、この楽曲には、今井寿独特の“開放感”が漂う。
櫻井敦司にとっても、“死”とはある意味“ゴール”であり、
解脱。すなわち世俗との別離への憧れを表現しているのかも知れない。
憧れは確かにある。
本当の意味で、己では“死”は確認できないから・・・。
死ぬまで。そして、死んでも。
そして、また“死”の反対ある“生”に対しても、確かなものなどなかった。
そんな心情を
櫻井敦司は「真実なんてものは 僕の中には何もなかった」と唄う。
空虚な世俗の“生”に対しての虚しさが、
いずれ来る“死”への憧憬として描かれている。
だとしたら“開放感”は当然の帰結なのかも知れない。
ヴィデオクリップも、BTメンバーの死化粧でのパフォーマンスは壮絶だ。
“美”を通り超し、黒いドレスを脱ぎ捨て、
白装束の屍となって唄う櫻井敦司は“見事”としか、もう言葉が出ない。
この頃、他のバンドも影すら踏めない所まで彼等は来ていた。
die
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
僕は両手を広げ 全てを許したいと願えば
君は空から降り立つ
真実なんてものは 僕の中には何もなかった
生きる意味さえ知らない
なんにも
あー 星が海泳ぐみたい
あー 楽しげに誘う様に 夜は優しくて・・・
あの雲さえ越えてゆく キラメクまでこの夜に
何処まで まだ飛べるだろう 疲れ果てたこの体
死ぬまではばたいていく
ここでお別れしようよ 悲しい事は何もないはず・・・
軽く最後のKissして
楽しい夢は終わる まぶたを閉じて 永遠を感じて
肌に死というぬくもり
夢じゃない
あー 目覚めには 遠く深い
あー ここは何処 僕だれなの? 僕は突き抜ける
体はもう ちぎれそう この声も この愛も
遠く消える 青い星 みつめては うつむいて
サヨナラ 全てのものよ・・・
もう二度とは帰れない 生まれてきた あの海へ
遠く消える 青い星 みつめては うつむいた
サヨナラ・・・全てのものよ
