1992年9月10日、9月11日横浜アリーナにて行われた『Climax Together』後、
同年12月2日にライヴヴィデオ 『Climax Together』が発売されて以降、
1993年に入っても沈黙を守り続けたBUCK-TICKは
突如、1993年5月20日、ライヴツアー【darker than darknessーstyle93ー】を開始する。

そして、来たる5月21日、
次のアルバムに先行するシングル「ドレス」がリリースされる。
オリコン初登場第5位を記録。
 
オリジナル歌詞カードが縦書きだったことからも、日本語のみで書かれているのが印象的で、
前作『狂った太陽』から【ことば】を更に奥深く造り込んだ櫻井敦司の詩作は、
日本ロックの新たなる芸術的一面を開花させている。
その内容も単に“耽美”という【ことば】が陳腐に聞こえるほどで、
まさに堕天使サタンか、もしくはドラキュラ伯爵の嘆きのようなモチーフが用いられ、
色恋とはまた違った“美”を追求している。

美しいメロディも、「JUPITER」に続く星野英彦の手による傑作で、
演奏でも彼自身もギターではなく、鍵盤を担当している。
激しく剃り上げたモヒカンの眉無し今井寿は、ギターという楽器の限界に挑戦。
竪琴のような旋律を儚くも奏でている。
ジャジーなドラミングのヤガミトールも斬新である。
そして何よりも特筆すべきは、櫻井の“吐息”で始まる樋口“U-TA”豊の濃厚なベースラインが、
セクシーだ。

ヴィデオクリップの櫻井敦司の“美”の頂点を極めたといって過言ではない。
もう彼の性別など誰も気にしない位に美しい。
まるで絵画の中の麗人が動き唄っているようである。




しかし、誰もこの“美”を極めた名曲が、
次のアルバムの凄ざましい“闇”の入り口とは、思いもしなかった。






ドレス
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)



鏡の前で君とまどろむ 薄紅の指先

その手は不意に弱さを見せて 唇をふさいだ

あの日君と約束を交わした 今は二人想い出せずに


退屈な歌に耳を傾け 窓の外見つめる

僕はドレスをまとい 踊って見せよう

狂ってるかい 教えて

いつか 風にさらわれてゆくだろう

今は二人 想い出せず

僕はなぜ 風の様に雲の様に

あの空へと浮かぶ羽がない なぜ

星の様に月の様に 全て包む

あの夜へと沈む羽がない ああ



忘れないで 愛あふれたあの日々

君の顔も 思い出せずに

いつか 風にかき消えされてゆくだろう

今は二人 思い出せず


僕はなぜ 風に様に雲の様に

あの空へと浮かぶ羽がない なぜ

星の様に月の様に全て包む

あの夜へと沈む羽がない ああ

僕はなぜ

風に様に雲の様に あの空へと浮かぶ羽がない

なぜ

この愛もこの傷も懐かしい

今は愛しくて痛みだす ああ