『殺シノ調べ This is NOT Greatest』は
アルバム『狂った太陽』にてその力を開花させたBUCK-TICKが、
その方法論で過去の楽曲を新たに選出してセルフカヴァーしたベストアルバム。
録音状態やアレンジが今ひとつだった過去の楽曲が、
魔法を架けられたかのように、そのポテンシャルを完全に引き出され驚くほど進化された。
他にも大胆なリアレンジを施され生まれ変わったり、
原曲にないアイデアがプラスアルファされた曲もあったりと、
全体的に楽曲がもつ世界観の補完・拡充に重きを置くと同時に、
更に曲の繋がりにもこだわりがみられたりと、ただのベストアルバムには収まらない作品と言える。
これは、ひとえに今井寿の情熱が昇華したものと考えていいだろう。

しかし、このファニーな作品のリアレンジは、意外と大変だったのではないか?

今井寿は

「原曲はもっとスピード感があるが、今回はもっとゆっくり作って、
ちょっと聴いてるときれいなんだけど、
よく聴くと怖いなっていうアレンジにしたかった。
だから音は全部フニャフニャ。
バックとヴォーカルが全部混ざっていて、聴いてるうちに気持ち良くどんどん沈んでっちゃう。
で、音は怖いんだけど、詞はけっこう悲しい内容なので、感動できると思うんだけど」

とこの複雑なアレンジを解説している。


もともとファンタジックな曲風をさらにスローな作品に仕立て上げ
混沌をモチーフとしたのだ。


また楽器という武器を持たないヴォーカル櫻井敦司も、苦心した。
リアレンジに際して、精神的を意識して再収録に臨んだと語っている。


しかし、映像の【殺シノ調べ This is NOT Greatest Tour】では
『惡の華』収録された原曲に近いテンポでパフォーマンスされた。
いや、むしろ原曲よりもワイルドにプレイされているのが印象的だ。
まるでインディーズ時代のノリが乗り移ったかの様で、
櫻井敦司も激しく唄っている。
「LOVE ME」を始めこういった様々なアレンジによって
不気味なニュアンスが増す不思議な魅力のあるのがBT楽曲である。
BTマジックである。




LOVE ME
(作詞:桜井敦司/作曲:今井寿/編曲:BUCK-TICK)


細い手首をかみ切る 媚薬が傷にしびれる
Love me 涙も Crying 血の色

どんなに夢を見ても 気付けばいつも独りさ
Love me 夢見て Dreaming 眠ろう

My Darling 月夜に羽を広げて
消えるまで Love me

ラララ・・・

My Darling ちぎれた夢に さよなら
ささやいて Love me

ラララ・・・