「存在する唯一の時間は今だ」
        (ウォーリー・フェイマス・エイモス)



BSサテライト・サーキット。
実際『狂った太陽』は、櫻井敦司の歌詞だけではなく、
BUCK-TICKというバンド自体の大きな前進であった。
それは、創作という行為に於いても、演奏技術に於いても、
そして、精神的な成長という面でも。

しかし、こういった自己変質願望を、恐らくこのバンドは初めから持っていた節はある。
否、この当時のバンド・ブームから派生したバンド達は皆、その可能性を持っていた。
それが、環境というキッカケがトリガーとなり、発露したのが、
たまたま、BUCK-TICKだったのかも知れない。
BOOWYブレイクを始めとするバンド・ブームは、
いわゆる、ビート・パンクが主流であったが、
この頃になるとそれは、いかにも古臭い手法に見えた。
『TABOO』よるゴシックのその傾向が見え初めて来た変化しろ、
そして、事件による活動停止の“時間”が、彼らの内なる“要素”を醸造した件もあるが、
『悪の華』では、明らかにビート・パンクよりも以前のロック=グラムとの融合と溶解し
ニュー・ウェイヴ/ニュー・ロマンティックを感じさせる。
『狂った太陽』に至って、櫻井敦司の「狂気」の歌詞が、
このサイバーなサウンドとゴシックの雰囲気を結びつけた傑作となって結実した。






そんななかで
「MY FUNNY VALENTINE」と「ANGEL FISH」の2曲は雰囲気が異なる。
今井作品と星野作品の違いはあれ、このジャジーな懐古趣味と
妙に明るい櫻井敦司のヴォーカルのバランスが見事である。

死んでもいいよな太陽血肉まで溶ろけだしてゆく
ソウ美シイキミヲ二度ト眠ラセルValentine
Oh !! My Funny !!!

今井寿 の繰り返すギターリフがリフレインする。
そして見せ場はこの楽曲のテーマと合間の今井寿のコーラスが切なくポップだ。
同名のジャズの名曲とは全く関係無い。
しかし、今井寿はこのニュアンスだけをこの楽曲に封じ込めた。
実にジャジーなポップだ。



MY FUNNY VALENTINE
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)


狂った俺はかげろうだ ゆううつさに歌うよ Lady
最後に教えてあげるよ 灰に埋もれたRhapsody

アア僕ハコンナニ 待チ焦ガレテル Valentine
ソウ愛シイ君ガ 赤イ血ヲ注グ Valentine

夢見たお前幻だ 気懈さに躍れよ Lady
ZAKUROにむさぼりつくのさ 見世物小屋の Last Show

アア君ノカカトガ 通リ過ギテク Valentine
ソウ狂オシイ程ニ 胸ヲ切リ刻ム Valentine

死んでもいいよな太陽 血肉まで溶ろけ出してゆく
怖くて仕方がないのさ 鏡に映る Destiny

アア僕ヲ置キ去リ 君ハ残酷ナ Valentine
ソウ美クシイ君ヲ 二度ト眠ラセル Valentine

今夜燃え尽きたいのさ ふたりきり灰になる
全て憎んでもいいだろ 君さえも俺さえも

死にゆく愛しの Valentine I want Valentine
サヨナラ愛しの Valentine My Funny Valentine

今夜燃え尽きたいのさ ふたりきり灰になる
全て憎んでもいいだろ 君さえも俺さえも
今夜崩れ落ちたいのさ ふたりきり灰になる
全て裏切りと信じた 君さえも俺さえも

死にゆく愛しの Valentine I want Valentine
サヨナラ愛しの Valentine My Funny Valentine
死にゆく愛しの Valentine I want Valentine
オヤスミ愛しの Valentine My Funny Valentine




エンジェルフィッシュ
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:星野英彦 / 編曲:BUCK-TICK)


ちょっと抱いて 哀れな人だね
逃げ出す前に泳ぎ疲れて
そっと噛んで 醜い僕だよ
囁きは嘘 知っているだろう

That Truelove 頬をすり寄せ
胸に滑らせる その前に

ちょっと抱いて 話すことがない
重なるだけで 割れた唇
そっと噛んで 綺麗な月だね
抱きしめたけど 水に漂う

That Truelove この世の罪
どうぞ この胸切り裂いて

もう一度だけ 僕をイカせておくれ
ああ ちょっと噛んで
夢を見たのさ とても素敵な夢を
ああ そっと抱いて

That Truelove 溺れてゆく
今は 流れに身を委ね
That Truelove 息が出来ない
やがて 何もかも沈むでしょう

もう一度だけ 僕をイカせておくれ
ああ ちょっと噛んで
夢を見たのさ とても素敵な夢を
ああ そっと抱いて