「スピード」のヴィデオ・クリップのメイキング映像はビクターの宣材「キャピタゴン」から。
BUCK-TICKにおいて、この楽曲の持つ意味合いは、前述べた“自殺説”も含め多岐に渡るが、
この突き抜けたリズムとメロディは、筆舌しがたい。
ある種“奇跡”的な作品といってもいい。

本作は、バンドがそれまでのダークさとポップさの狭間で、
例えると灼熱と極寒の中に“天国”を見たという感覚に近いだろう。
文句なく刹那的でカッコイイ。

ヴィデオ・クリップも「悪の華」に続き最高の出来だ。
しかし、「悪の華」のようにダークなカッコ良さではない。
なにか、そう突き抜けた光を感じる。

バンド・ブームからヴィジュアル系の元祖といわれた流れの中でBUCK-TICKは、
『悪の華』を経て、早くも次の場所を求めたようである。
デカダンな帽子とロングコートでマラカスを振る驚異的美貌の櫻井敦司と
メッシュTシャツに短パンという突飛な姿で、バッサリと短髪にした今井寿が
ただ単に耽美追求だけに始終した過去を物凄い「スピード」で振り払ったのだ。

トリップし過ぎ?

そんな感覚が、この楽曲を聴いていると沸々頭を過ぎる。
やはりドラッグの印象は避けられない事実であるが、
誰も正面切ってそれを問い質せない凄味が、当時のバンドにはあった。
この時期を以って、絶頂期と考えるファンも多いのはそのせいだ。
絶対、こんな刹那的なグループが長続きするワケがない。
それほどの渾身のエネルギーがこの一曲から感じられるからだ。
その先に見えるの“死”のイメージだ。
しかし、それは決して終わりを告げる“死”ではなく、「変身/REBORN」であった。

かつて、「ロックは死んだ」とばかりにDAVID BOWIEは「ROCK'N ROLL SUICIDE」を唄った。
そして彼は宇宙人ジギー・スターダストから
新たなるキャラクター、ハロウィン・ジャックやホワイト・シン・デュークに変身して行った。



「イカレタノハオレダケ キミハスコシマトモダ」



完全に自覚的な妄想である。



スピード
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



人差し指を頭に突き立て ブッ飛んでいる
いつでも頭ギリギリ 噛み砕いて
ためらいをとめて 摩天楼 ダイブするのさ

今夜も頭ギリギリ 骨まで透けて見えた
安らぎをとめて 今宵の共犯者達へ

女の子 男の子 一筋 傷と涙を
痺れた体 すぐに楽になるさ
蝶になれ 華になれ 何かが君を待っている
愛しいものに全て 別れ告げて

-イカレタノハオレダケ キミハスコシマトモダ-

スピードをあげて 摩天楼 ダイブするのさ
ボリュームをあげて 今宵の共犯者達へ

女の子 男の子 君には自由が似合う
これが最後のチャンス 自爆しよう
蝶になれ 華になれ 素敵だ お前が宇宙
愛しいものを全て 胸に抱いて
君が宇宙

目覚めは今日も冷たい 月夜のガラスケース
今夜も頭ギリギリ 骨まで透けて見えた