「M・A・D」では、現代社会問題となっていたストーカー的なモチーフが採用された。
櫻井敦司の歌詞は、この後如実に“自己否定美学”を血反吐を吐くように追求していくが、
その原点は、この「M・A・D」に現れている。
また当時を生きる人間の持つ様々なコンプレックスをこの楽曲で表現したかったようだ。
一方、今井寿をして、パーフェクトなサウンドと言わしめたこの楽曲は、
あらゆる意味で、この時代の音楽業界でも特異な姿をしていたが、
時代は90年代に入り、そういった異形の姿が普遍化していったのだ。
この先取り感覚も特筆すべきであろう。
ハード・ロック・ベースにテクノの感覚とミックスチャーのサウンドは
実はこの後のロック・シーンの流れを牽引していたのだ。
海外では、GUN'N ROSESがアルバム『USE YOUR ILLUSION』などで
単なるHM/HRから一歩進化した感覚のハードロックを展開したり、
LENNY KRAVITZが今風のロックと古臭いR&Bを融合したり、
HIP POPを大胆に導入したRED HOT CHILI PEPPERSや
NIRVANAといったオルタナティヴ・ロックの息吹がシアトルから登場していた。
こういったロックシーンの大きな流れを示唆していたが、
それらが90年代~2000年にかけて、
ロック・ミュージックのカテゴリーというものを破壊し尽した。
その洗礼が早くも海を越え日本でシンクロしたのが、
この時のBUCK-TICKの異形の姿かも知れない。
そんな時空を越える楽曲が「スピード」であり「M・A・D」であった。
M・A・D
(作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)
僕は狂っていた ひざをかかえながら
傷をなめていた 汁を垂らしながら
逃げ出すサイレンの渦 こうして生きてゆくのか
僕は狂っている 舌を溶かしながら
赤い海の底で溺れる夢を見る
想い出す優しさだけを そうして眠りにつくよ
アスファルトを抱いて 熱にうなされている
僕を破裂させてくれ
僕は狂っていた もう二度と会えない
全て狂っていたどうって事無いサ
逃げ出すサイレンの渦 想い出す優しさだけを
子守歌の中で聞いた あなたの鼓動
僕を狂わせてくれ
ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片
アスファルトを抱いて 熱にうなされている
僕を破裂させてくれ
子守歌の中で聞いた あなたの鼓動
僕を狂わせてくれ
ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片
ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片
僕は狂っていた もう二度と会えない
全て狂っていた どうって事ないサ
