ビクター「キャピタゴン」から。
映像は「スピード」のメイキング・シーンだが、BGMは「MAD」であり、
双方の楽曲についてほんの少しだけ語られている。

アルバム『狂った太陽』のメイン・コンセプトは“狂気”である。
それを、象徴するかのような双子の楽曲が「スピード」「MAD」の2曲だ。
もしくは、全く同じモチーフを、裏表から表現した楽曲とも言える。
サウンド的に両曲の持つ“狂気”は、それまでのBUCK-TICK作品からすると、
ファンキーなリズムに支えられ、1990年代に入り、アメリカはシアトルから突如跋扈した
オルタナティヴ・ロック、グランジの要素が取り込まれている。
サウンドは、それまでの作品に比べ“乾いた”空気に満ちているし、
何よりも“オシャレ”になった。

それに比べ、櫻井敦司が抉る歌詞のほうは、じっとりと“狂気の世界”を描いている。
この「MAD」の歌詞も最高の出来と言える。
「スピード」で登場する主人公は、オーバードーズの末に、新世界は見つけている。
イメージとしては、摩天楼にダイヴしたら、天に昇って逝ったようだが、
この「MAD」では、逆に深く深く沈んでいくような感覚だ。
「スピード」では、
「イカレタノハオレダケ キミハスコシマトモダ」
と孤独感を歌っているが、
「MAD」では、「狂っちまえよ」と他人をも巻き込んで沈んでいく蟻地獄のよう。
そして、
「ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片」
光さえ届かない所まで堕ちて行くのだ。
これは“堕天使”の嘆きなのかも知れない。



MAD
 (作詞:櫻井敦司 / 作曲:今井寿 / 編曲:BUCK-TICK)



僕は狂っていた ひざをかかえながら
傷をなめていた 汁を垂らしながら
逃げ出すサイレンの渦 こうして生きてゆくのか

僕は狂っている 舌を溶かしながら
赤い海の底で溺れる夢を見る
想い出す優しさだけを そうして眠りにつくよ

アスファルトを抱いて 熱にうなされている
僕を破裂させてくれ

僕は狂っていた もう二度と会えない
全て狂っていたどうって事無いサ
逃げ出すサイレンの渦 想い出す優しさだけを

子守歌の中で聞いた あなたの鼓動
僕を狂わせてくれ

ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片

アスファルトを抱いて 熱にうなされている
僕を破裂させてくれ

子守歌の中で聞いた あなたの鼓動
僕を狂わせてくれ

ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片

ああ ただ星が綺麗だね 僕はお前にはなれない
ああ 輝きが消えてゆく もうすぐ太陽の破片

僕は狂っていた もう二度と会えない
全て狂っていた どうって事ないサ