高嶺の花
遠くから見るだけで、手に入れることのできないもの、あこがれるだけで、自分にはほど遠いもののたとえ。
小学生時代近所に住んでいた友達が、ある日自転車のかごの中に凄い物を入れてやってきた。
その当時僕らの遊びと言えば、みんなでサッカーをしたり、学校のグランドで無意味に自転車でグルグル回りブレーキをかけて後輪を滑らせて遊んだり、北斗の拳ごっこをしたりして時間を忘れて日が暮れるまで安い遊びをしていたのです。
そんな僕らの前に現れたミチヲは自慢げに自転車のかごから取り出して僕らにその凄い物を見せびらかしたのでした。
「ウォー!すげー! これどうしたん? 」
「誕生日に買ってもらったんだ。」
ミチヲは、いつも僕らより先に欲しいものをもっていたのです。
ファミコン、ラジコン、エロビデオ。
いつも僕らより先に手に入れていたのだ。
「ちょっと走らせてよ。」
「いいよ。」
そう言うと校庭を気持ちよくその凄い物。つまりラジコンを走らせていたのでした。
そりゃ僕らはそのグラスホッパーというラジコンに心を奪われましてね。
まるで、好きな人でも出来たかのように毎日ラジコンの事を思いました。
なにせ僕ら世代ではその当時タミヤRCカーグランプリとかいうのをやっていて、持っていないがテレビの前に釘付けになっていたのだ。
「くそー、日高のり子にインタビューされてー!」
とか思ってましたし。 なんならインタビューで話す事考えてましたし。
まあ、そんな事で完全にタミヤの陰謀ともいえるラジコン欲しい欲しい病にかかった僕は誕生日を見計らっておねだりをする訳なのですが、やっぱり高価なものでちっとやそっとでは全く聞き入れてもらえる事もなく、
「バカ、どこにそんなお金があるの!」
取り入る隙間も1mmもなくあえなく却下されてました。
その後何度も何度もお願いするのですが、やはり無理でしょんぼりしてた所にクリスマスがやってきました。
ラストチャンスにかけた思いが通じたのか、おばあちゃんが見かねて買ってくれたみたいで、その年のクリスマスに大きな箱をもらったのでした。
ホントに涙が止まらないくらい嬉しくて嬉しくて、急いで包装紙をビリビリに破って早くかわいいラジコンちゃんを見てやろうとひたすらビリビリ破ったのでした。
でもそのラジコンちゃんはコードがついてました。
涙が止まらなくて、涙が止まらなくてしかたありませんでした。
だって、リモコンと本体がコードでくっついてるんですもの。
あいつが前進なら、僕も前進・・・
あいつがバックなら、僕もバック・・・
それはそれは涙が止まらなかった。
おばあちゃんこれじゃないよ。
そんな事も言えず、ラジコンと一緒に前に後ろに仲良く歩くのでした。
タミヤグランプリで勝つには僕の脚力の強化にも力を注がないといけないみたいです。
僕にとってラジコンは高嶺の花。
あれから20年経ちました。
会社の同僚がラジコンを持ってまして、ちょっと遊んだらまた欲しいほしい病が始まってついに買ってしまいました。
まずは入門用(タミヤ TT-01 XB インプレッサ)から。
高嶺の花もいつかは手に入るのかもしれない。
yasssy
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