今日も暑いよ
そっちはどうだい?

もうすぐやって来るな…
君がいなくなった日
明ける前18日の17時半頃
君から店に入電…18時に仕事を終え
呼び出されるまま迎えに行ったら
君は顔をぐしゃぐしゃにして
泣きじゃくっていてさ
取り敢えず海まで行けと…
後は聞いても話してくれなくてさ
泣いてる間は走っていようと思ったんだ

僕はE20〜C4…C1〜湾岸Bを回り
大黒PAで君に飲み物を買ってさ 
車に戻ったらいない…
以前一緒に契約しに行った
買い取りのMOVAも置いてきぼり
とりあえずベイブリッジを望める
デッキを探すと隅っこで風に当ってた
アイスココアを受け取るも
まだヒックヒック言っててさ
一緒にベンチへ移動して
「肩貸す?胸貸す?」って言ったら
君は少し笑って肩に頭をもたげたよな
僕は煙草を吸って…
君の顔を見たらさ
涙が乾いてきたから
気が済んだら車に戻っておいでと告げて
僕はここに来れば
必ず集まってる仲間の所へ行き
軽く挨拶…
君が戻ってくるのが見えたから
少し前に見つけてピカピカにした
ハヤシを4本 言い値で仲間に引き渡してさ
この後仲間といつも行く南部は断って
車を出した
そのままE16を走り久里浜で降り
そこからはひたすらR134を
タバコも吸いたいからゆっくり走る
もう22時過ぎだけど…
「腹へんないの?」と聞いた途端
「フッてきたー。結婚してたの。
全然知らないまんま2年も一緒にいたんだよ…馬鹿みたいでしょ、今日昼に奥さんがショールームに来たの…普通に紹介されてさぁ…」と話し始めたから
うんうんと話を江の島まで聞いてた…
由比ヶ浜で海岸へ降りて
また肩を貸す…泣く…抱く…泣く
「帰れそう?」と聞くと
首を振るけど…
君の携帯はさっきから鳴りっぱなしだよ
とりあえず家族には電話をさせて
同じ道をあまり通りたくない僕は
R129 からR246、それでR16へ回る事にした

それが…駄目だった… 

君が話して話して少しスッキリしたのか
町田あたりで腹が減ったという
遅いからドラスルなと言うと
不貞腐れたけど
2人とも明日も仕事だし そこは強行…
既に明けて19日も2時を過ぎた
小雨が降りだして
今日のお礼を僕に伝えてくれた…
会話らしい会話はそれが最後だった
君の好きな曲を君がチョイスして
君は偶に涙を見せつつも歌いながら
僕の「カーステ」を自在に楽しんでた
煙草を吸いながら僕は少し安心したけど
R16の3時は大型トラックが
わんさと湧いて出てくる時間…
小雨も止みそうにないし
僕は都道へずれてのんびり走る事にした

それも…駄目だった

町田からもうすぐ八王子へ入るころ
信号で止まった…この信号は長いから
サイドブレーキを引いて煙草に火をつけた
ちょうど君の好きな曲も途切れたし
「大丈夫?」と聞くとしっかり頷いて
二人ともなんだかホッとした時
僕は後ろから迫る車のタイヤの雨音が
ちっとも速度を落とさない音で気になり
バックミラーを見たら
よく知ってる大型トラックのグリルが
ミラーいっぱいに迫ってきたのを見て
思わず君に手を伸ばしたが
その後は鼓膜が破れる様な衝撃音と
ガラスの割れる音が響き
僕の車は勝手に動き出し
交差点の真ん中で止まった…一瞬だった3:18追突してきたトラックが1度停まる
僕は外に出ようとしたが
ドアが開かない…
窓はフロントガラス以外全部割れていた
運転席側の窓から飛び出して
トラックを追うが走り去ってしまった
警察に電話をしようと車に戻ろうとしたら
僕の身体は転んでから立てない
たまたま居合わせてくれた対向車の人が
車を降りてきてくれて
起こしてくれて車まで戻った
君は「首痛い…大丈夫?それ雨?血だよね、血だらけだよ…」
と言ってシートベルトを外そうとしたから
そのまま動くなと促し僕は救急車を呼ぶ…
僕の血だらけは腕の肉が削げていたのと
転んだ所がガラスの破片の上だったから…
対向車の人が警察を呼んでくれたらしく
先に君が、その後に僕が…
其々の救急車で近くの救急病院に搬送された…
どうやって両親と再会したのかは
ハッキリ覚えていない…
未だに母にも聞けないでいる…

そこから
2度と君に会えなくなった
君の人生を奪ってしまった

翌日の夕刊に載ってニュースになった
9日後…逃げた犯人が捕まった
居眠り運転だった
そのトラックの会社は
都道を走ってはいけない規則だったらしく
ばれるのが嫌で逃げたそうだ
僕は腰と首の重度の鞭打ちで
2週間入院していた
葬儀にも出られなかった…
未だにお墓も知らない…

僕の両親は僕の入院中
君のご両親に何度も謝り
僕が退院してからは
僕と一緒に何度も謝りに行ってくれた
現場検証の時に情状酌量の弁が
犯人と刑事さんからあったが
話の途中 僕が犯人を殴った事で
僕も犯人になるところだった
手錠をかけてる相手を殴るのは
アンフェアだと叱られた
僕を羽交い締めて止めてたのは母だった

君を泣かせた奴が会いに来た時に
君のご両親に全部話してきたと言われた後
君のご両親は僕の家に来なくなった…
毎月19日に
君のお家へお詫びに行っていたけど
もう来なくていい…と言われたよ

その後も僕は暫くどうかしていたと思う
君の所へも何度も行こうとしたし
それでも生きなければならないのなら
其れ相応かそれ以上の痛みを
一生自ら強いなければと思って
生きていた頃も事もあった
不快な人がいない所なら
その跡を隠す必要も無いと…
その分までしっかり生きないと…
そう思えるようになるにも
それなりに時間が掛かった

結局犯人は過失致死傷罪と
逃げた罪が重なり15年の刑期となった

6月なると 思い出す頻度が更に増す
1日たりとも忘れる訳が無い
車に乗れば思い出すし
小雨が降れば思い出す
失恋と聞けば…下衆と聞けば…思い出す
腰が痛めば首が痛めば思い出すよ
毎月19日になれば思い出すし
君が聴いていた曲を耳にすれば思い出す
忘れまいと手にしていたCDは
割れてる物もあるけど…まだ全部持ってる

どうしようもない…
生きるより他ないんだよ
綺麗事じゃなく…君の分まで
節目節目でも…君が納得する様に
生きないと…と思ってるよ…
思い出す度「此処」にいるんだなって
そう思わずにはいられないんだよ

藻掻いて足掻いて這い蹲っても
生きる事を有り難く生きたいと思うんだよ
それで合ってるかい?
それなら僕は…まだもう少しこっちで
頑張らないといけない筈だから
もしも閻魔審判にクリア出来たら
君の傍へ行こうと思うよ
そっちはどんななんだい?
淵しか知らないけど
これまでの間にその淵にさえ
行けなくなる様な事をしていたら
君には本当にもう会えないんだろうな…
合っていたらいいな…
せっかく「此処」にいるのなら
少しアドバイスを囁いてくれたらいいのに
答え合わせはまだまだ先かな…