大河 294~297ページ 【小説「新・人間革命」】第14巻2024年7月1日
青空を、薫風が吹き渡っていた。
人類の幸福と平和の大海原をめざす創価の流れは、いよいよ「渓流」から、「大河」の時代へと入った。
一九七〇年(昭和四十五年)五月三日──。
山本伸一の会長就任十周年となる第三十三回本部総会が、東京・両国の日大講堂で行われた。会場正面には、十周年を示す金色の「10」と、「新生」の赤い文字が浮かぶ、大パネルが掲げられていた。午前十時五十分、開会が宣言された。
管弦楽団の荘重な響きが場内を圧した。総会祝典序曲の演奏である。合唱団、鼓笛隊、吹奏楽団などの歌声と調べが、参加者を魅了した。
続いて第二部に移り、開会の辞、経過報告などがあり、会長・山本伸一の講演となった。
新聞、テレビなど、報道関係者も多数出席しており、伸一が立ち上がると、一斉にフラッシュがたかれ、煌々と撮影用ライトがつけられた。
伸一は、参加者に向かって深く一礼すると、よく通る声で話し始めた。
「この十年間、皆様方の真剣な努力精進によって、広宣流布の輝かしい時代を見事に築き上げることができました。力なき私に、誠意の限りを尽くし、不眠不休の活躍によって守ってくださった皆様方に対し、私は、感謝の言葉もございません。
ありふれた言葉でありますが、この胸にたぎる万感の思いを込めて、私は全学会員の皆様に御礼申し上げたい。本当にありがとうございました」
それは、彼の心からの思いであった。
健気なる、大誠実の同志がいたからこそ、学会は、嵐を乗り越えて大前進することができた。勇敢なる大確信の同志がいたからこそ、学会は常に微動だにしなかった。
伸一は、一人ひとりを抱き締めたかった。諸手をあげて、皆を讃え、励ましたかった。
この日の朝、伸一は詠んだ。
打ち続く
死闘の大難
乗り越えて
きら星光る
人材育ちぬ
この同志のために、わが人生を捧げようというのが、十周年を迎える彼の誓いであった。