〈社説〉 2024・6・27 感染症対策の政府計画が改定へ2024年6月27日

コロナ禍の経験生かす努力を

 新たな感染症拡大の危機に備える「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」の改定案が、今月にも閣議決定される。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の経験を踏まえ、2013年に策定された政府行動計画を初めて大幅に改定する。
 
 今回の改定案では、新たな感染症が出ていない「準備期」、新たな感染症発生の「初動期」、その後の「対応期」の三つの時期に分類し、特に「準備期」、すなわち「平時の備え」を拡充させた。
 
 中長期的な人材育成、研究開発の支援といった視点が加えられ、改訂前の6項目だった対策は13項目に拡大した。
 
 新型コロナの感染が急速に拡大した際、医療の提供が滞ったことが思い出される。「救える命を救えない」という事態を招かないよう、平時から医療提供体制を整備することが重要だ。改定では、発熱外来に対応する医院、病床を確保する病院等について、各都道府県が地域の医療機関と連携し、事前に決めることが示された。
 
 また、マスクをはじめ必要物資の備蓄・配置も推進される。
 
 感染を確認した後の対策については、感染拡大を遅らせる「水際対策」を講じつつ、検査体制の強化、ワクチンや治療薬などの供給に努めるとした。
 
 医療ひっ迫の恐れがある場合、科学的な知見が不十分な段階でも緊急事態宣言など強い措置をとることが明記された一方、ワクチン、治療薬の普及の状況などに応じた機動的な運用で「国民生活及び社会経済活動への影響の軽減」を目指すことが盛り込まれている。
 
 今後、行動計画の見直しは6年ごとに検討されるという。
 
 大切なのは、国民の理解を得ることだ。例えば、偽・誤情報によって惑わされることのないよう、「科学的根拠等に基づく正確な情報」が国から発信されることを知ってもらう必要がある。
 
 イギリス帝国現代史の大家であるオックスフォード大学のマーガレット・マクミラン名誉教授は、過去に生じた世界的な危機とコロナ禍を比較しつつ、“今回も以前のようにうまくいくだろう”という油断が被害を拡大してきた、と指摘している(2021年8月5日付本紙「危機の時代を生きる」)。
 
 コロナ禍の経験を生かし、その対策が今後も検証・改善されることを期待したい。