〈男子部のページ〉 東北男子部が2031年(東北広布80周年)へ“地域学”運動をスタート!2024年6月27日

  • 青年世代が“地域継承”のハブに

 全国各地で人口減少や過疎化が指摘されて久しい。特に東北の山間地などでは自治会や消防団などの担い手が不足し、伝統行事を開催できなくなっている地域も。これら地域社会の未来のために、創価の青年世代は何ができるか。ここでは、東北男子部の「“地域学”運動」の取り組みを紹介したい。

6月に開催された「西川町・未来座談会」。青年部有志4人によるアンケート結果発表では、「西川町の課題は、率直に何だと思いますか?」など、9個の質問に対する回答への分析が示された

6月に開催された「西川町・未来座談会」。青年部有志4人によるアンケート結果発表では、「西川町の課題は、率直に何だと思いますか?」など、9個の質問に対する回答への分析が示された

そもそも“地域学”運動って?

 東北6県の男子部リーダーは思索を重ねていた。多くの地域で過疎化・人口減少が進む東北地方。このままいけば、地域の機能は立ちゆかなくなり、その地域独自の歴史や文化さえも途絶えてしまうのではないか――。
  
 学会創立100周年の2030年、また東北広布80周年となる2031年。それまでに、東北男子部として、何をすべきなのか。話し合いを重ね、ある指導に行き着いた。
  
 1979年、池田先生が「大白蓮華」2月号の巻頭言で発表した「『地方の時代』と広宣流布」。その中に次のような言葉がある。
  
 「仏法というものは、人々の心に何かを押しつけていくものではない。各地域の生活様式や、文化的伝統をふまえて、生命を内より薫発していくことが、法を弘める正しい在り方とも考えられるのである」
  
 「学会も、広布の永久的な基礎と発展のために、地方地方にそれぞれの特色を生かしながら、揺るぎなき妙法の牙城を構築しゆくことが、最大の課題となることを忘れてはならない」
  
 学会の男子部が率先して地域活動にコミットすれば、地域の機能も維持できる。加えて、男子部一人一人も、社会貢献の取り組みを通して、学会員としての「誇り」を感じることができるのではないか。
  
 とはいえ、従来の男子部の活動にプラスして、地域貢献を呼びかけても、現場のリーダーは「重荷」と感じてしまうだろう。そこで着目したのが、地域を多角的な視点で探究する「地域学」だ。
  
 地域の人々と連携を取りながら、地域の歴史や文化を学ぶ運動を男子部主体で行っていけば、地域貢献の確かな流れができるのではないか――こうして「“地域学”運動」が始まった。
  
  

リーダーの“もやもや”「これって学会がやること?」

 「“地域学”運動」のモデル地域として、いち早く取り組んだのが、山形県中央部にある西川町。豪雪地帯として知られ、町内にある月山は日本百名山の一つ。現在、人口は約4600人で、約45%が高齢者だ。
  
 出発は昨年秋。今までにない斬新な試みに、ピンとこない人も少なくなかった。地元・山形常勝県男子部長の犬飼高拡さんも、「なんで学会の男子部が地域のことを調べるのだろう」と疑問を抱いたという。
  
 それでも、まずは、メンバーと共に町の歴史や文化を調べるところから始めた。皆で西川町出身の偉人を扱った映画を鑑賞した。
 協議を重ねる中で、先輩世代を含め、創価学会の内外の垣根を越えた住民アンケートを実施してみては、と意見が一致した。
  
 壮年・女性部の先輩方に友人を紹介してもらいながら、アンケートを通して、一人また一人と意見を聞いて回った。
  

日本百名山の一つである「月山」。夏には高山植物が咲き、多くの登山客が訪れる(写真:PIXTA)

日本百名山の一つである「月山」。夏には高山植物が咲き、多くの登山客が訪れる(写真:PIXTA)

  
 町の成り立ちや文化、おいしい飲食店やおすすめスポット……。町民の人たちの話は、発見の連続だった。「西川町のことを知っているようで知らなかった」。取り組みを進めるうち、心から西川町を好きになる人が増えていった。
  
 アンケートを受けた町民からも「地域のことを見つめる機会になった」「若い世代が地域のために動く姿が頼もしい」という声も寄せられた。また、男子部のリーダーを中心に町役場や観光施設などとも連携を取り、多くの賛同を得た。
  
 いつしか犬飼さんの“もやもや”は晴れていった。「アンケートを通して、ご自身の半生を語ってくれた方が多かった。地域について学ぶことは、その地域を好きになるだけでなく、生き方を確認する機会にもなるのだと思います」
  
 結果、約3カ月間で、西川町の全人口の6・5%にあたる301枚のアンケートを回収することができた。
  
  

この町の未来を語る場

 アンケート結果を発表する場として、6月2日、学会青年部主催の「西川町・未来座談会」が開催された。会場の「西川交流センターあいべ」に約100人が来場。菅野大志町長をはじめ来賓の姿もあった。式次第は次の通り。
  
 ・主催者あいさつ
 ・民謡パフォーマンス
 ・アンケート結果発表
 ・ディスカッション
 ・来賓あいさつ
 ・謝辞
 ・全員で花笠音頭
  
 青年部有志による「アンケート結果発表」では、集計結果と分析を発表。その後は、「①『いいマチ』ってどんなマチ?」「②そのために自分ができること」の二つをテーマに、参加者全員でディスカッション。
  
 「アーティストが来るようなホールが欲しい」
 「子どもが安全に遊べる場所があるといい」
 「住民のつながりも大事だと思う」
  
 生い立ちや世代もさまざまだが、時間を忘れ、活発に意見が交わされた。
  
 行事の準備に携わった石垣章之進さん(男子部本部長)は、「皆さん、着眼点は違いましたが、“この町をどうにかしたい”という思いは共通していました。青年世代として、町づくりに貢献したいと思います」と。
  
 「来賓あいさつ」では、菅野大志町長が登壇。アンケートの講評を行った。
  

「西川町・未来座談会」の会場後方には模造紙が並ぶ。ディスカッションで出た意見が付箋に書き出され、貼られていた

「西川町・未来座談会」の会場後方には模造紙が並ぶ。ディスカッションで出た意見が付箋に書き出され、貼られていた

  
 地域の“今”を知り、“これから”について考える機会となった「西川町・未来座談会」。「自分は故郷が好きなんだなと再確認した」「西川町には未来があると実感できた」「若い人の研究発表に感動した!」など、前向きな答えも多かった。
  
 「私も含めて、アンケートに取り組んだメンバーの多くが生き生きと活動できたと思います。人口減少の進む山形、そして東北の今後を見据えて、私たち青年世代が地域継承の“ハブ”になっていきたいと思います」(二階堂哲哉山形総県男子部長)
  
 今後、「“地域学”運動」は、市町村ごとの「未来座談会」を一つのゴールにして、各県でも行う予定だ。「東北広布80周年」となる2031年までに、東北の全市町村での実施を目指す。
  
 中村広宣東北男子部長は決意する。「人口減少が進む課題先進地域である東北だからこそ、全国の先駆けになるはず。東北から、これからの広布のモデルケースを確立していきます!」
  
  

菅野大志西川町長の話
これからの若い力に期待

 今回のイベントを主催していただいた創価学会青年部の皆さまに心から感謝申し上げます。
  
 私は、まちづくりとは「誰が何で困っているか」と「誰が何をできるのか」を結び付けることから始まると考えています。そのためには、今回のイベントのような、町民同士の積極的な対話が欠かせないと思っております。
  
 アンケート結果を拝見して、特に注目したいのが、「100年後にも残したい『西川町の宝物』『西川町らしさ』」という質問です。結果は第1位が、「自然の豊かさ」、2位が「食」、3位が「町民の人柄」となっています。
  
 西川町は百名山・月山を抱え、自然環境や山の恵みはとても有名です。
  
 「自然」と「人」。この二つの強みを活用するため、町としても地域おこし協力隊のインターン受け入れや音声通話アプリLINEの「オープンチャット機能」など、町民の方との接点を持てる場をつくろうと、さまざま試みてきました。
  
 今回、実施していただいたアンケートで、私の要望で追加してもらった項目があります。それは「あなたの『特技』『得意なこと』は何ですか?」という問いです。
  
 結果、3割を超える方が「コミュニケーション、人と人をつなぐ」と回答。西川町の強みは「人と人とを結ぶ力」であり、私たちのこれまでの政策が間違っていなかったと確信を深めることができました。
  
 町民の300人もの声が得られたアンケートは、私たちにとっても大変、貴重なものです。何よりも、このアンケートが、町の未来を考える若い世代によって実施されたことに深い感銘を覚えます。
  
 今後、わが町の創価学会青年部の取り組みが、東北各県に広がっていくと伺い、東北の未来を開く取り組みを一緒にさせていただいたことに喜びを感じています。
  
 過疎・高齢化が進む東北から始まった希望あふれる取り組みに、今後も期待しております。