〈社説〉 2024・6・24 ヤングケアラーへの支援期待2024年6月24日

“声なき声”聞く地域の連帯を

 1クラスに1人以上、ヤングケアラーがいる――2022年に発表された厚生労働省の実態調査によると、小学6年生の約15人に1人が「世話をする家族がいる」と回答した。
 
 「ヤングケアラー」とは、本来、大人が担うと想定されている家族の介護や世話を、日常的に行っている子ども・若者を指す。
 
 その介護の責任や負担が重過ぎると、学業や友人関係、就職などに影響したり、心身共に追い込まれたりしてしまうこともある。
 
 そうした人たちへの支援を明記した「子ども・若者育成支援推進法」の改正案が今月5日、国会で可決、成立した。今後、相談窓口の拡充や地域格差の是正など、さらなる後押しを期待したい。
 
 ヤングケアラーは、決して遠い存在ではない。ただ、家庭内のデリケートな問題と関わっているため、本人や家族に自覚がないなどの理由から表面化しにくい。
 
 また「ヤングケアラー」という言葉が社会的に認知され、問題が可視化される一方で、家族の世話を担う“かわいそうな子”という“レッテル貼り”がなされる中で、かえって社会から孤立してしまう場合もある。かつて自らがヤングケアラーだった人は、“あの時、相談できる人が一人でもいてくれたら”と振り返っていた。
 
 臨床心理士の村上靖彦氏は、次のような存在の重要性を訴える。
 
 ①「私サイド」に立ってくれる大人(共感するだけではなく、権利を擁護してくれる存在)②複数の居場所、複数の支援者(安心安全が感じられ、自分を肯定してくれる場、またそこに常駐スタッフが複数いること)③ピアサポート(理解し合える友人)、である(『「ヤングケアラー」とは誰か』朝日選書)。
 
 孤立しがちな子どもたちにどう寄り添うか。行政や学校だけでなく、地域の心ある人々による、多角的なサポートが欠かせないだろう。日頃から親しくあいさつを交わすなど、身近な存在の関わりも大きいはずだ。
 
 人と人の心を結び、“声なき声”を聞き逃さない“地域のネットワーク”が今こそ必要とされている。私たちも日頃の学会活動を通し、このネットワークづくりに寄与していきたい。
 
 誰も置き去りにしない社会へ、「あなたの味方だよ」と励ましを送る地域の連帯を共に広げよう。