〈社説〉 2024・6・22 「反戦出版」の発刊から50年2024年6月22日

一人一人が“平和の語り部”に

 太平洋戦争末期の1945年、国内最大の地上戦が起こった沖縄。3カ月にわたる凄惨な戦闘は、20万人余の尊い命を奪った。あすは、沖縄戦等の戦没者を追悼する沖縄「慰霊の日」である。
 
 終戦から79年。戦後生まれが人口の85%を超え、戦争体験者の減少が著しい。沖縄戦で学徒隊として動員された元学生による同窓会組織も、会員の減少や高齢化で解散が相次ぐ。生の証言を聞くことは、年々難しくなっている。
 
 今から50年以上前の1973年、沖縄青年部が取り組み始めたのが戦争体験の聞き取りだった。翌74年には、創価学会青年部として初の反戦出版『打ち砕かれしうるま島』を発刊。79年までに沖縄青年部として計5冊の証言集を結実させた。近くは、2016年に『未来へつなぐ平和のウムイ(思い)』、20年には、沖縄の中・高等部員が聞き取りしてまとめた『私がつなぐ沖縄のククル(心)』が発刊されている。
 
 20年発刊の証言集の作成に際し、証言の聞き取りをした当時中学2年のメンバーが先日、改めて本を手に取った。
 
 体験者の平和への切なる願いは彼女の心に焼き付いているものの、聞き取りした言葉をまとめた時の記憶は薄れつつあったという。「でも本を開き、再び体験者の言葉に触れて、その方の表情、声の響きがよみがえってきたんです。その思いを、次の世代に伝えていく使命が私にはあるのだと実感しました」
 
 戦争体験の継承は、風化との戦いである。ゆえに、体験者の「言葉」が「形」として残る反戦出版の意義は大きい。
 
 沖縄国際大学名誉教授の石原昌家氏は、学会の戦争証言集の取り組みを「戦争、紛争がやまない時代に抗うように“これが戦争だ”と警鐘を鳴らし続けている」と評価した上で、証言集を「一人一人が読み込み、自分が体験者から直接聞いたような思いで語り継いでいくことが大切」と強調する。
 
 反戦出版などの記録をどう生かし、平和の語り部を育てるか。沖縄青年部は本年、県内16の小中学校に「沖縄戦の絵」と「紙芝居」の貸し出しを実施。また本日、平和の心を学ぶ沖縄青年部主催のピースフォーラムに青年世代の友が集い合う。青年へ、子どもたちへ、生命尊厳の思想を語り、伝えていくことを改めて誓いたい。