名字の言 松尾芭蕉が俳諧の理念とした「軽み」2024年6月16日

 俳諧紀行文の名著『奥の細道』は、俳人・松尾芭蕉と門弟の曽良が1689年に東北や北陸などを巡った道中を描いたもの。335年前の今時分は、みちのく路を旅していた▼芭蕉が俳諧の理念とした「軽み」。この大意は、高い志を持ちつつも、庶民的、世俗的なものに触れ、詠む中でその真意を高揚深化していくことである▼これは“信心の眼”にも通じよう。仏法では、肉眼に映る物事の表層だけでなく、その内奥に宿る意味や価値を見いだそうとする▼かつて、池田先生は恩師・戸田城聖先生から万般の学問の個人教授を受けた。ある講義を修了した時、恩師は池田先生の胸に“一輪の花”を挿した。後年、先生は記している。「その花こそ、世界中のいかなるものにも勝る、最高に栄誉ある勲章である」と。そして、その一輪の花への感謝と精進を誓った心が、世界の多くの大学などから名誉学術称号を受ける因になったとも▼フランスの詩人ロートレアモンの言葉に「現象は過ぎ去る。ぼくは法則を探す」(渡辺広士訳)とある。目まぐるしい変化の時代にあって、その揺れ動く状況に一喜一憂せず、生命の次元からの変革を目指す私たちの広布の歩み。その生き方こそ確かな幸福を築く力である。(城)