〈社説〉 2024・6・8 梅雨期からの熱中症対策2024年6月8日

適度に汗をかく習慣が予防に

 今年も既に各地で真夏日(30度以上)を記録し、暑い日が続出する中、熱中症による救急搬送者が相次いでいる。気象庁は、この夏の平均気温が全国的に高くなると予測。観測史上、最も暑かった昨夏に続き、「災害級の暑さ」になる可能性があるという。
 
 特に、梅雨明けの時期に発症者が増える。昨年の熱中症による救急搬送者数(1週間ごと)を見ると、7月10~16日に急増し、8318人で前週の2倍に。ピークは24~30日の1万2066人。その後、高い水準で推移するも、減少に転じた(総務省消防庁発表)。
 
 日本医科大学付属病院の横堀將司・高度救命救急センター長は、体が暑さに慣れていないと、発汗機能等が十分に働かず、体温が上昇しやすくなり、熱中症のリスクは高まると指摘。「梅雨の時期から、体を暑さに慣れさせる『暑熱順化』に取り組むことが重要です」と強調する。
 
 具体的には日々の生活で汗をかくよう心がけたい。日本気象協会によれば、ジョギングやウオーキング、ストレッチ等の運動が効果的という。忙しくて時間を取れない場合、「通勤時に1駅分多く歩く」「できるだけ階段を利用する」「入浴時には湯船に漬かる」など、手軽な取り組みも推奨している。
 
 屋外での活動では、気温が高い時間帯を避けることが大切だ。
 
 暑熱順化の効果が出るまで約2週間かかるという。個人差はあるが、一つの目安にしたい。
 
 体が暑さに慣れた後も「高温多湿の場所に長時間いない」「エアコンなどでの室温調整」「小まめな水分補給」といった基本的な予防策が重要だ。発症リスクが高まる日には、特に高齢者や児童、乳幼児への気配りも必要である。
 
 改正気候変動適応法の施行に伴い、4月下旬から「特別警戒アラート」の運用が始まった。これまでの「警戒アラート」より一段上の基準として注意が喚起される。特別警戒アラートの発表中は、適切な対策が取れていない運動やイベントなどの中止・延期を検討することが呼びかけられるほか、公民館、図書館をはじめ、自治体が指定する「クーリングシェルター(暑熱避難施設)」を住民に開放するよう義務付ける。
 
 熱中症の発症原因は明らかであり、確かな情報に基づく適切な対策で予防することができる。一人一人が万全の備えを期したい。