〈社説〉 2024・6・5 「教員の働き方」を考える2024年6月5日

地域・社会全体で改革推進を

 ある公立小学校の保護者会で、校長が丁重に理解を求める場面があった。「電話対応は18時までとさせてください」。教員の長時間労働を是正する一環という。
 
 校長は「教員が心身共に健康であることは、教育活動の質を高めることにつながり、結果的に子どもたちにも良い影響を与えるからです」と語った。
 
 教員の働き方は長年の課題になっている。2018年に経済協力開発機構(OECD)が48カ国・地域を対象に実施した「国際教員指導環境調査」では、日本の小・中学校教員の多忙さが突出していた。1週間の仕事時間は最も長く、特に事務作業や課外活動にとられる割合が多い。一方で、教員としての“能力開発にかける時間”は最短だった。地域によって改善の兆しは見られるものの、さらなる改革が求められる。
 
 教員と保護者の認識のずれが、互いの信頼関係を損ねているとの指摘もある。例えば、学校保健安全法によれば、登下校時の子どもへの責任は、学校側ではなく保護者にある。放課後の校外で起きたトラブルへの対応も基本的には保護者が担うことになっているが、その実態は異なる場合が多い。ここにも、業務見直しの効果を期待する声は少なくない。
 
 一方で、保護者にも余裕がないという実情もある。近年、保護者間のつながりは一段と薄れ、頼れる親族も近くにいない。そうした孤立化が、学校への過剰な要求につながってしまう側面もあろう。
 
 その意味で、教員の働き方改革には、行政の支援だけでなく、地域・社会全体の理解と取り組みが肝要だ。創価学会が各地で進める「家庭教育懇談会」も、子育ての悩みや喜びを分かち合う場として保護者に安心感を広げている。
 
 池田先生は、つづった。
 「学校教育において、子どもたちに最も強い影響を与える、最大の教育環境こそ、教師という人間の存在である」「教師が、自らを、いかに磨き、向上させていくかが、社会建設の最も重要な課題となる」(小説『新・人間革命』第24巻「人間教育」の章)
 
 「子どもの学びと成長、そして幸せのためなら、どんな労苦も惜しまない」という教員は多い。その崇高な使命と責任を生き生きと果たせるよう、皆で支える。それが教育環境の充実、より良き社会の構築へとつながるに違いない。